被差別部落の人々や、苦難の上に生きてきた人々の中にこそ、正当な民衆文化が花咲くのだと断言してもいいと思います。というのは、私はポピュラー音楽が専門ですが、ジャズでもブルースでも二十世紀のポピュラー音楽における画期的な表現は、貧しく差別を受け、流浪の旅をし、大変な苦労をして、常に人間とは何かを問うた人たちの中から生れ出たからです。
ジャズの巨人の一人、ルイ・アームストロングなど、まさにこの通りです。一番に惨めな生活、一番に苦しめられた社会の中に育った、一人の才能のある人間が画期的なジャズのクリエーターになったのです。これはロックでもブルースでも同じです。
しかも、そのほとんどが十代だ、というのも興味を惹かれます。
「黒人なんて人間ではない」などと、今でも言われています。私はジャズやブルースを生んだアメリカの南部を歩いてきましたが、その差別たるやすさまじいものがあります。でも黒人たちは「俺たちこそが本当のアメリカ文化を担っているのだ」と、差別に対して叛旗を翻したのです。
その百年の歴史が、アメリカの音楽文化、つまりジャズやブルースの歴史となっているのです。
ゆえに「竹田の子守唄」も、誇り高き文化の結晶である。
これからは、そのように声を上げて主張し、みんなにうたってもらうべき歌が「竹田の子守唄」だと私は思っているのです。
(おわり)
*Special Thanks :部落解放・人権研究所
*なおこの講演記録は『部落解放・人権入門 2004』(雑誌『部落解放』増刊号=528号、解放出版社、1050円)にも収録されている。
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