「琉ぬ風」
十二月四日(火)
対馬から熊本の山都町へ出かけて、豪邸に戻ってきたら「杉並に住むコザんちゅ兼田優一」、別名zoka、なる人物からメールが届いていた。「藤田さんのブログ何度か拝見させていただきました、三線 がんばってますね〜僕も頑張らなきゃ」
などと書いておる、兼田氏はな。
三線を手にしてから丸二年だとも。
ちゅうことは、ぼくよりもきっと上手いはずとイマジンするのだが…あぁそうやった、あのニーシェー(青年)じゃねーか、兼田君は。世田谷の
仲地のぶひで展で、悪くないなーという島の歌をうたっていた彼だ。そして兼田君は、「琉ぬ風(りゅうぬかじ)」という持ち歌もMP3で電送してきて、不届きにもぼくに聴けと言う。嫌なこった。ぼくより上手い奴の歌だ。ましてや、新作など遠い夢物語のぼくにむかって新しい「持ち歌」を送りつけてくる。あぁ、シットに嫉妬やぜ。でもせっかくだから聴いてやろうじゃねーか…ってんで、パソコンをクリックしたら、これが悪くなかった。今のメインストリーム、ポップ&メランコリックな島唄、ってやつ。兼田君は人がらがよさそうな声をしている…と、おっとっと、思わず情がうつりそうになってしまうから、no no、彼には厳しい態度で接しなくてはならぬと思いなおしたのだった。若者やしな。こんど、泡盛で決闘じゃ!
でもワシ、上手すぎる名人たちには平身低頭…これって矛盾かしら。卑怯っていうのかしら。
「オモテの拍子」
十二月五日(水)
九州旅行の少し前から
亀渕友香さんが執筆者の一人になってる『歌がうまくなる本』(主婦と生活社)を読んでいる。兼田君にも負けられんし、コザ(沖縄市)には
秀子ネーネーがいるし、周りは「敵」だらけで夜も寝られぬ。だから秘密裏に『歌がうまくなる本』なのだ。
亀渕友香さんは日本にゴスペルを流行らせた人で、竹田でぼくらが「竹田の子守唄」を録音したときにも、わざわざ歌唱指導しにきてくれたほどナサケある素晴らしいボーカリストなのだ。そしてこの本は、亀渕さんのほかの本もそうだけど、めちゃくちゃわかりやすくて、しかも含蓄がある。指導者としてゴスペル隊を率いてきただけのことはある。たとえば…
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よく「表拍の手拍子は民謡みたいで気持ちが悪い」なんていう若い人がいます。でも、民謡のどこが悪いのでしょうか? いいじゃないですか、民謡。自然に心地よいと思うタイミングで手拍子してもらえばいいのです。たとえ、こちらが裏で拍子を取っていても、お客さんが表で打っていたら、それにあわせればいいことです。どんな場合でも歌えるのがプロなのですから。裏だろうが、表だろうが、どっちだっていいんです。
要は楽しいかどうかということ。(七十五ページ)
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味わい深い、
亀渕友香先生のお言葉だ。