「トランスジェンダー」を、著者である三橋順子は「性別越境」のことだと説明している。でも…「性別越境」って何だ?
それは生まれがオトコであるはずの人物が、服装を代え、言葉遣いを違えオンナになること。フェイク・オンナのことだ。その逆の、オンナからフェイクなオトコへという性の越境もある。三橋順子も女装するオトコで、かつトランスジェンダーの歴史を研究する大学の先生であった。
このホンモノの「フェイクな性の専門家」が語る日本文化史、あるいは日本人論は説得力のあるものだった。歌舞伎、宝塚歌劇団、演歌(女心を男が切々と歌い上げる)、あるいは最近のテレビに溢れんばかりに登場しているゲイや女装者たち…これらチマタのエンターテイメントを挙げるだけでも、日本人は「性の越境」について、キリスト教文化圏よりははるかに寛容である。順子先生は、それは神話時代からめんめんと続く日本人の特性なのだと主張する。
(文・藤田正)