私には、なぜダメなのか理解できません。しかし自主規制というか、組織として止めておいたほうがいいようだという「暗黙の規約」にひっかかった代表的な1曲です。
「父ちゃんの為なら、エンヤコーラ、母ちゃんの為なら、エンヤコーラ」と始まる「ヨイトマケの唄」(作詞作曲・
美輪明宏)は、四〇代より上の方であれば一度は聞かれたことがあると思います。美輪さんは、シャンソンの方です。シャンソンは、日本では「おフランス趣味」みたいに成金を競い合うような音楽じゃないかと勘違いする時もありますが、ほんらいは大衆の苦しみや笑いをストレートに描き出すものでした。
美輪さんは、本当のシャンソン歌手です。だからこそ「ヨイトマケの唄」が書けて、今でも歌っていらっしゃるわけです。
美輪さんと10年くらい前にお話しさせていただいたことがあります。
「ヨイトマケの唄」では、「土方」という言葉が大変に問題になるらしいんですね。
この歌は、土方を卑下しているのではありません。誇らしいものとして描いているんです。ひたいに汗して働く土方の姿がどこが悪いのでしょうか。でも、土方とは汚らしい呼び方だとか、働いている人から抗議がくるんではないかという身勝手な思惑が、「じゃあ止めといたほうがいいな」という判断につながるらしい。「
復興節」と同じです。
「ヨイトマケの唄」というのは、日本を代表する60年代の大名曲だと思いますけれども、これも放送という舞台から消されていく歌となりました。(美輪さんの最新アルバム『{愛}を歌う』キング KICS857 にも、「ヨイトマケの唄」が収録されている)。