十代のジョン・レノンを描く:『ノーウェアボーイ』、11月5日から公開
 何かの虜になることは十代の特権と言えるのかもしれない。
 リバプール時代のジョン・レノンを描いた『ノーウェアボーイ』も、まさしく音楽に夢中になっていく「あいつら」が登場する。
 ジョンに二人の母と呼べる女性がいて、これが好対照の性格だったことが知られている。『ノーウェアボーイ』はそのtwo mamasと彼女たち(姉妹)の手の中から飛び立たんとする息子(ジョン)の物語だが、親と子の確執を取り巻く音楽がまた魅力的だ。音楽にイカれた「あいつら」がその後のポップ・ミュージックを牽引したのだった。
 
 
 冒頭、ジョージおじさん(デイビッド・スレルフォール)からジョン(アーロン・ジョンソン)に手渡されるホーナー社のハーモニカは、いわゆるブルース・ハープと呼ばれレノンのようなブルースロックンロール・フリークに欠かせない楽器となっていく。実母であり、いささか享楽的性向にあるジュリア(アンヌ・マリー・ダフ)が耳打ちする言葉が「ロックンロールってセックスのことなのよ」。OH! そして、ジョンがジュリアとまるで恋人のようにねちねちする場面にかかっているのは、R&B界で最もおどろおどろしいナンバー(だから笑ってしまう)「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」(by スクリーミン・ジェイ・ホーキンズ)である。このヒット(1956年)はこれまでかなりのカバーなり映画で使われているけれども、やはり(?)本作品でも象徴的に使われているのだった。
 象徴的とは、一人の英国青年が「黒い」「悪魔」の歌の世界へと染まっていく、その<露払い>としてである。ちなみにジュリアと一緒に出かける近隣の海岸はブラック・プールという有名な保養地だけれども、その名前でわかるように、かつて奴隷貿易で栄えた港町、リバプールがどのような歴史的背景を持つかを暗示している。ジョンなり、後半でいよいよ登場するポール・マッカートニー(トーマス・ボローディ・サングスター)が大変な才能の持ち主であることは疑いのないことだが、リバプールの「血筋」なしにその開花はあり得なかった。ロックが黒人音楽(文化)の子であり変種であることを、『ノーウェアボーイ』は、そのあふれる音楽的記号を通じて教えてくれるのだった。
(文・藤田正)
 
*2010年11月5日(金)から、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国でロードショー。
 
『ノーウェボーイ ひとりぼっちのあいつ』公式サイト http://nowhereboy.gaga.ne.jp/index.html
 
YouTube:Screamin Jay Hawkins "I put a Spell On You"
http://www.youtube.com/watch?v=7kGPhpvqtOc&feature=related
 
amazon-サントラ『ノーウェボーイ ひとりぼっちのあいつ』(2010年10月6日発売)
 

( 2010/09/21 )

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