「竹田の子守唄」というメッセージ・ソング(4) by 藤田正
Beats21
 花*花のプロデュサーである品川知昭さん(写真)は、かつてパンク・バンドでの活動経験がありました。この時、発売される予定だったアルバムに収録される14曲中13曲が、いわゆる「レコ倫」(レコード倫理審査会)の基準にひっかかりました。
 ある歌などは、レイプで始まった二人の関係が、最後にはハッピー・エンドで終わる物語でした。これは、特定の言葉の適切・不適切ではなく、歌の大意が問題とされた例でした。
 品川さんは当時、自分たちのバンドのアルバムを検討したレコ倫の内部資料に目を通す機会があったそうですが、レイプで始まったにもかかわらず本当の愛が芽生えたというのであれば、委員会として否定的な判断を下す必要はないのではないかという意見もあったそうです。
 ここで間違えてならないことは、レコ倫には歌の内容を変えろという命令権なり決定権なりはないということです。内容の修正や、世に出すか否かは日本レコード協会に属する大手レコード会社各社の裁量に委ねられているのです。品川さんたちは、結局のところ、パンク・バンドらしく(?)突っ張って発売を決行してしまったそうですが、レコ倫の意見に素直に従う事例は過去にたくさんあります。      
 花*花が『コモリウタ』に吹き込んだ「竹田の子守唄」にも、レコ倫側は、意見を寄せてきました。それは赤い鳥がうたった歌詞なら、ということでした。
Warner WPCV10208
 花*花バージョンによる「竹田の子守唄」は、サウンドは(品川さん式に言えば)、人権といえばアムネスティ、アムネスティといえば、ピータ・ゲイブリエル。ならば彼の名作『サード』のようなイメージでやろうと、彼は清水信之さん(サウンド・プロデューサー)と一緒にアイデアを練ったそうです。
 歌詞は赤い鳥のバージョンを、「在所」を「ざいしょ」ではなく「さと」と、うたい変えて録音しています。「ざいしょ」の意味については、私の『竹田の子守唄 名曲に隠された真実』に詳しく記載されていますので、そちらを読んで下さい。
 品川さんは、レコ倫とのやり取りだけでなく、過去の差別問題がからみついているがゆえにレコード会社の上層部が発売に向けて心配していたことなども、率直に話してくれました。品川さんはしかし、企画の段階から、基本的にこの名曲に問題の起ころうはずがないことを確信していたようです。
 またメンバーの「こじまいづみ」が、ある日、京都でこの歌をうたうと発言した時、彼女の言葉を耳にした周囲の人たちが及び腰になったことも、品川さんは明かしてくれました。
 でも、さっくりと、彼女たちはこの歌を世に出した、というわけです。
 その軽やかさ、優しさをぜひこのミニ・アルバム『コモリウタ』で味わってほしいものです。(連載5へ続く)
 
関連サイト:
『竹田の子守唄 名曲に隠された真実』
藤田正著 2200円+税
3曲入りCD付き(1「竹田の子守唄」、2「竹田の子守唄(元唄)」、3「竹田こいこい節」/1=赤い鳥、2&3=部落解放同盟京都府連合会改進支部女性部)
解放出版社:06-6561-5273(大阪)、03-3291-7586(東京)
 
関連サイト:

( 2003/02/28 )

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