『アメリカ:ア・トリビュート・トゥ・ヒーローズ』『ザ・コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ』の2枚は、大がかりなチャリティ・イベントのライブだが、緊急に企画されたイベント〜レコーディングにもかかわらず、高名なアーティストの招聘から、選曲、録音ほか、プロデューシング全体の秀逸ぶりは特筆すべきものだった。
ライブではないが『ゴッド・ブレス…』や、(本来はHIV患者のためのチャリティだった)「ホワッツ・ゴーイング・オン」のプロジェクトも同様に高いクオリティを誇った。
これらの作品は、それぞれが犠牲者への追悼や義捐金調達のために大きな成果を上げた。
と同時に、広い視点に立って眺めた時、アメリカやイギリスの大物スターたちが戦意高揚のために手を貸した行動でもあった。
その典型例が、『ザ・コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ』の呼びかけ人でもあった
ポール・マッカートニーの「フリーダム」で、彼はこの歌で、自由は神から与えられた権利であり、我々はその自由を奪おうとする者と戦うと主張している。
戦争への言い訳として古今東西、使い古された文句が、マッカートニーのような人物の口から復活してきたというのは、情けないかぎりである。
音楽と人間社会との関係を、考えさせられた2001年だった。
参照記事:「宇多田ヒカル/
戦争反対と28歳引退の二つのメッセージ」「
佐野元春、米・同時多発テロを歌う」「
ニューヨークの惨劇、坂本龍一もHP上で報告」