10月12日 しょうちゃんの蛇に三線/藤田正
「2010年の琉フェス」
 
十月一二日(火)

 
「琉球フェスティバル」は、なぜか雨の日が多い。今年も朝までは雨模様だったのだが、うまいぐあいに夕刻までには晴れてくれて、開演までにはいい感じになった。セーフ。
 10月10日、それは太平洋戦争の最末期、那覇一帯が壊滅状態となった那覇大空襲の日でもあった。ディアマンテスはその祈念イベント(那覇まつり那覇大綱挽)に出演が決まっていたために日比谷へ来ることはできなかった。登川誠仁先生も関西で流派のイベントがあって欠席。しかし野外音楽堂は約3000人の観衆を集めて大いに盛り上がったのである。
 観客の高揚は、まずは司会進行のガレッジセールに向けられた。最前列の何人かが最初から二人に泡盛の「一気飲み」を強いる。これは琉フェスの「儀礼」のようになっているが、昨年にあっては、川ちゃんがこれにやられて前後不覚までになり、それでも司会をやり遂げた(翌日の昼にレギュラー出演した「笑っていいとも!」でも、本当にかわいそうな有り様だった)。だから今年の二人は、かなり注意して壇上に立ったが、(昨年のことを知ってなのだろうか)客席の一部からは、やれ飲め、ほれ一気の猛烈な波が襲い掛かってた。となれば、お笑い芸人としては「もうしようがないよ」「あそこでは、飲むしかないし」(楽屋でのゴリの弁)、となる。お笑い芸人たるもの「笑い」と「盛り上がり」の火を消すわけにはいかないのだ。
 今年は特にゴリが集中砲火を浴びて、楽屋裏で見ていたぼくなりスタッフたちはグデングデンのゴリに大量の水を飲ませるわ、椅子をあてがうわ……でもガレッジの二人の凄いところは、舞台袖では完璧に白目を剥いている状態にもかかわらず、舞台の進行だけは把握していて、今まで這いつくばっていたかと思いきや、がばっと起き上がってステージへ駈けて行くのだった。その満面の笑顔、感動的でした。売れる芸人さんは、お客さんに「殺される」と思っても「やり遂げる」のですね。
(一部のお客さまへお願い:来年からは、出演者にお酒をふるまわないでご自分だけでおたしなみ下さい。「沖縄=アルコール天国=一気」というイメージは、だいたいがウソだし、とんでもなくヤボね)。
 今年の琉フェスの特色は、ウチナーンチュではないアーティストが2組出たことだった。
 宮沢和史(with 大城クラウディア)と上々颱風である。
 宮沢和史は着流しでクラウディア(彼女はアルゼンチンの沖縄2世)と一緒に、ド演歌調の古い沖縄歌謡「二見情話」ほかを歌ったが、これがいい刺激になったのだろう、宮沢&大城セットからバトンを渡された「よなは徹」(バンド・セット)らは、猛チャージの演奏&ボーカルで会場を興奮状態へ持ち込んでいった。
 たった一人のギター弾き語りで舞台に立ったローリークックも、まさしく情熱的なボーカル。さすが我がコザ派の兄さんは違うな〜。もろに、ハードエッジだもの。反骨の大政治家、故・瀬長亀次郎さんを歌った「カメジロー」を象徴として、沖縄の今もたぎる「血」と「肉」を、オレの歌を通じて感じてくれ……彼はそのためだけに東京へ来たのだった。
 ぼくは彼に、「来てもらって良かった」とだけ伝えて別れた(来年の4月4日、「てるりん祭」でまた会おう!)
 大工哲弘パーシャクラブ(vo.新良幸人)、池田卓上々颱風……どのシンガー/バンドも、短い持ち時間だが、それぞれが個性を発揮したステージだった。予告なしにステージにのぼったのが、女性トリオ「サンサナー」(セミの意味)。文字通り、初めてのステージだった。一所懸命の明るい舞台。彼女たち、舞台を終えたあと緊張が一気に解けたようで、上地正昭(パーシャ)らと抱き合って泣いていたのが印象的だった。サンサナーは、パーシャらの先輩たちに送りだされるようにして結成されたグループなのである。まだ若いが、島唄と琉舞で鍛えられた3人だけに、今後の活動に期待しよう。
 そんなサンサナーのデビューを当日、精神的にバックアップしていた一人が、古謝美佐子だった。トリをつとめた、その古謝さん。富山の「こきりこ節」からスタートし、直前までの「乱舞状態」を一瞬のうちにに鎮めて、母性のオーラに包まれた、かのコジャ・ワールドへぼくらを連れ込んでしまうのでした。
 なんと「童神」では生後2ヶ月の赤ちゃんを抱いてのボーカルだもの、ど〜するよ。この子の名前が「音来」ちゃん(ニライと読む/ニライカナイ=海の向こうの「楽土」をイメージ)というのだけれど、「琉フェス2010」の確かな思い出のために、シメとして古謝さんと音来ちゃんが形作ってくれたのでした。
 
よなは徹。会うたびにガラリとイメージを変えるのです(Beats21.com)
 
 
パーシャクラブのリード・ボーカリスト。島の神さまにお願いしたら、一晩でこんなに髪が伸びたそう(Beats21.com) 
 

サンサナー。初舞台の直前のスナップ(Beats21.com) 
 

楽屋にて(Beats21.com) 
 

何を歌っても古謝美佐子、ってのが凄いっす(Beats21.com)  

( 2010/10/12 )

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