「ゆきー」
三月三〇日(土)
昨晩、ゆきーのライブを聞いた。
ゆきーとは、
久場政行さんの愛称で、彼は園田青年会(園田エイサー)のリード・ボーカリストであり、四月二二日に発売されるライブ『
あんやんてぃんどう』にも参加してくれた実にコクのあるノドと、素晴らしいビート感を兼ね備えた人物である。
ぼくはこの人の歌が好きで、これまで何度もライブをきかせてもらったし、いろんな話もした。その中の印象的なヒトコトに、「エイサーの歌は民謡じゃない」というのがある。
沖縄の、いわゆる一般的な島唄だとエイサーのダンスに合わない。オレは若い頃は(沖縄の)民謡なんて聞いたこともないし、ずっとロックでした、とゆきーさんは言うのだ。
ゆきーさんのこのヒトコトは、示唆に富んでいる。
ぼくが登川誠仁さんや照屋林助さんといった人たちが好きなのも、独自のビート感を持っているからなんだろうな〜と思うからだ。沖縄の島唄は、基本的に優れた音楽ジャンルだとは思うが、同時に「島唄、全部が素晴らしい」わけでもない。島唄はかくあるべし、といった「型」の中で安住している歌手はずいぶんいるし、たとえば女性歌手の「なよ〜なよ〜」とした「女らしさ」をふりまく歌い方は、ホンマ気持ちわりー。その正反対が
上原知子さん(りんけんバンド)であることは言うまでもなく、知子さんの初民謡アルバムは、ゆきーさんのいう民謡の、その外にある画期的な沖縄民謡である。
ゆきーさんはまた、アマチュアだというのが、ぞくぞくするほどに素晴らしい。
ぼくは彼のライブで、オカネを払って聞いたことは一度もないと記憶する。
昨晩も、ある飲み屋で酔っ払ったあとでの「スペシャル・ライブ」だったのだが、その美しさ、
久場政行は本島系ストリート・ビートを体現する筆頭だと確信した。そして彼の後を、尊敬の眼差しで見つめ、また後輩として追いかけるのが、
よなは徹君だ。
…このような関係性を保ちつつ、沖縄の伝統的歌謡は、今に生きている。
六月六日、沖縄市で照屋林助&嘉手苅林昌を追善するフリー・コンサートが開かれるが、そのキーワードが「コザのビート」と言っていいだろう。LOVE、ゆきー。