「日比谷と半蔵門の」
十月二日(月)
九月二一日、琉球フェスティバルが日比谷野外音楽堂で行なわれた。
月が替わって十月の二日、半蔵門の国立劇場で「沖縄の唄と踊り」があった。
どちらも同じ沖縄の芸能である。
そして、同じであって同じではない、と思わせるのが両者を見たぼくの感想だった。
琉フェスは、断続的に降りかかる土砂降りの雨の中で執り行なわれた。奄美から「ワイド節」の坪山豊さんがやってきて、八重山歌謡の大工哲弘さんがいて、本島の金城実さんと山里ユキさんが歌って、我が「
SAVE THE CORAL」からは司会としてガレッジセールの二人が壇上に立った。会場の入口には。雨降りにもかかわらず、サンゴ礁保全を訴えるチームもビラや資料を配ってくれていた。たくさんの雨だったけど、なんだかとってもいいライブだったように思う。
忘れずに言っておかなくてはならいのは、よなは徹 & His Band が、女性コーラスも加えて「あんやんてぃんどう」を歌ってくれたことだ。何も言わないのに、徹は今回の琉フェスin東京が「
SAVE THE CORAL 2008」とリンクしていることを理解してくれていた。
各シマを代表する大物3人。左から金城実、大工哲弘、坪山豊
宮古島を代表するシンガーになりましたね、彼は。下地勇
大工夫妻とガレッジセール
孤高のシンガー、平安隆。手にしているのは特注の六線
山里ユキ! もっと有名になってほしい実力者
舞台裏の楽しい人たち。飲んでます
すっごい雨でも帰らないお客さんたち!!
月が替わって十月一日、国立劇場で「沖縄の歌と踊り」というイベントがあった。
平成二十年度文化庁芸術祭祝典…と銘打ってある。
ぼくは文楽友の会の会員なので、このてのイベントは割引でチケットを買うことができるのだけど、そんなことをしなくても、安いのね。三千円! 国家にバックアップされたイベントとはどんなものであるかが窺い知れるのであった。
そのイベントだが、島袋正雄、照喜納朝一、城間徳太郎、宮城能鳳…という
人間国宝四名を筆頭に、琉球古典芸能の気鋭が次々に登場するのであった。(ここだけの話だけど、ちょっと年をとりすぎて舞台に難がある方はいたのだけど)これは貴重な一日であったことに違いはない。
何より興味深かったのは、皇太子と雅子さんが来場して最後まで観覧したことで、これによって「琉球古典」を鑑賞するために、普通ではありえない空間をぼくは共有することができたのである。だって琉球古典というのは、決して庶民のためにあるのではなく、王朝の中だけで(明治の琉球処分以前までは)発展してきた芸能だからだ。
日比谷の、土砂降りの中で聞く「民の歌」とはまったく異なる「琉球王朝」の「宮廷内」で培われた「歌」と「踊り」、およびその系譜。
…こういう書き方をすると、なんだか批判めいているようだが、もの凄く良かったのね。
皇太子&雅子さんを中心的な観客として歌い踊られた、沖縄の「国歌」である「かぎやで風」。その歌の中にある朝の露のういういしさも、他の歌に表わされた収穫の歓びも何も、ほとんどは支配者の視点を抜きにしてはありえない。でもいいのね。
この感動を、土砂降りの琉フェスの良さと、どう結びつければいいのか。
あるいは結びつけてはいけないのか。
どーなんでしょうね。