「腱鞘炎」
三月十二日(水)
よなは徹先生は、右腕が腱鞘炎なのだった。けっこう痛いんだって。三線の右手は、極端にいえば、てのひらのつけ根をグッと折り曲げて爪(ギターでいうピック)を持つ。三線の胴を抱え込むようにして弾く。だから激しく繰り返すような演奏になったりすると、つけ根あたりにビリビリと「でんき」がはしるんだそうだ。
先生は気分がのってくると、そのスピリットが右手に伝わりついつい無理をする。チビッコの時から
歌三線を学んでいるから腱鞘炎は自分にとって職業病のようなもんだとも言うのだ。驚いたのは
大島保克さんも同じ悩みを抱えていて、いつもはグラスを持つのも大変なのだそうだ。それであんなプレイができるんだから、ホント、そとからはわからないものだ。だが私のばあい、未だに、月とスッポンの喩えどおり、三線はぜんぜん前へ進んでくれない。腱鞘炎などはるか夜空のムコウ。三月五日の楽屋で、二人っきりになったのをこれ幸いと、よなは先生に「どーしたらいいんでしょう」とメソメソ泣きついたら、先生は、ぽそっと「音が(聞き)取れるようになるといいんだけどね」とおっしゃってくださった。
こういう技人(わざにん)の一言が重要! オレはもらったぜ、ぶふふ。