「白いサンゴ」
十一月二十五日(日)
来年は「国際サンゴ礁年2008」と題してサンゴ礁を守ろうじゃないのという色々なイベントが開かれるのだそうだ。サンゴ礁といえば沖縄だけど、本島ではその大半が死滅か、死滅寸前だと言われて久しいのだった。少し前のことになるが、ぼくが映画『ナビィの恋』のテーマ曲を制作したころ、版画師の名嘉睦稔 (なか・ぼくねん)さん…環境省の「サンゴ礁年」の絵もこの人…と話していたら「白いサンゴ礁」という歌のことになった。彼は一九五三年生まれ。照屋林次郎(林房)もぼくも同じだが、昭和四十四(一九六九)年のこのヒットのことはよく覚えている。阿久悠が歌詞を書いた淡くロマンチックなカレッジ・ポップスなんだけど、ボクネンさんは「あの歌って、大間違いなんだよね」と語り出すのだった。サンゴは藻が栄養の供給源になっている生き物なのだが、(地球温暖化によって)海水の温度が上昇するとそのデリケートな関係が崩れてしまい、藻はサンゴから離れサンゴは白い「肌」をむきだしにする。だからブルーな海の下に真っ白に広がるサンゴ礁という景観は、自然が大々的にぶっ壊れてまっせー、の証明なのだった。人間の思い込みって、時に正反対のイメージを作り出すよね…サンゴの死を意味する「白化」を「美しい」と。若き日の阿久悠さんもこのことを知らなかったようだが、もはや「白化サンゴ」は沖縄や奄美といった国内だけのことじゃなく、全世界の問題になっているから笑えない。伊是名島に自然児として生まれたボクネンさんも怒っているようだった。サンゴ礁は、熱帯雨林に次いで地球で二番目に豊かな生物の宝庫。サンゴ礁には海洋魚類の六十五%が棲息しているそうで、その海からの恵みをワシらは日々、胃袋に入れている。
JR田端の駅前にある「ルノワール」で五十三年組の仲間とコーヒーをずずっていると、ウチナーンチュ・デザイナー・ミス真栄城さんがやってきて「こういうのができました」と一枚のペーパーをワシらに手渡すのだった。見れば「SAVE THE CORAL 2008」。ここにも白いサンゴを気にかけている人がいるのだった。
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DVD『ナビィの恋』