「新○ビル」
十一月二十四日(土)
沖縄から帰ってきた建築家の
関原宏昭さんと昼まっピルマからビールなのだった。新開発がぞくぞくの東京駅の近くのビルで待ち合わせをして、さーてどこでいっぺーやるかといつものように欲望むきだしで飲み屋チェックにかかろ、と思ったら、関原さんがここのフード・フロアのデザインはそうとうにおもしろいよーと言うから、二人は小指をからませながらレストラン街をひと回りしたのだった。どのジャンルもそうだけれど専門家の眼はシロートさんとはまるで違うから、その解説はいちいち納得で関原さんってただの呑ん兵衛じゃぁなかったんだー、と、死に感心したのだった。「ほぅ」「へぇ」のついでに、洒落ている(ようにみえる)この店、あのレストランはゼニ勘定としてどれほど持てばいいのか、という話になって、すると建築家は即座に「二年とか三年ぐらいでしょ」とおこたえになった。「さっさと儲けて、さっさと撤退する」「だからちゃんと見ればわかるように、まっとうなカネをかけてないでしょ」…でも安ブシンだと見破られないために、だからこそ、その場かぎりのアイデアや企画がフロアに注ぎ込まれる。土台を築き上げるより先に、ちょっとだけ輝けばいい「めくらまし」と「見た目の変化球」を提案できる者たちが重宝される。そぅここ丸の内にも「何でも投資」の社会へと急速に移行しつつある典型が、表出している、というわけ。青山にも六本木にもこういった店がまえのような…しかも、ビル全体がハナから早期撤退を意識しているものが、ありますよね、とぼくが言えば、「那覇の野心ある若い連中も東京に右へならえです」と、沖縄での授業を終えてきたばかりの先生建築家は、グゥとビールを飲み干されたのでありました。
コザの
照屋林次郎、秘密の三線店を開いたというウワサ。こっちは投資しがいがあるのか? え、リン。