「きょうだい」
十一月十九日(月)
だいぶ寒くなってきたが、気持ちは真夏…だから周囲からバカだと言われるのだ。沖縄にはちょいと行ってないが、毎日オキナワの何かを考えておるからお前の頭にはサンゴが生えていると周囲に言われるのだ。ったく、どうしようもない奴だ。
どうしようもないのはこの世のどこにもいて、その一人がコザの照屋林房(=照屋林次郎)なんだけど、この人が三線作りにすごい腕を見せるのが不思議だし世の中っておもしれーなーと気持ちがまた真夏になるのだった。林房は、絵描きでもあって、その筋もイケるってことは夏前にやった林次郎三線全国ツアーでよくわかったのだが、このときもぜんぜん彼は仕事をしなくて周囲はいったいどーすんの? ってかんじでさ、でも会場の片隅でちょろちょろ筆を動かしていると思ったら何点か絵が出来上がっていた。この絵が林次郎三線と組み合わせると…悪くないんだよ。島酒を呑むだけが能力じゃなかったんだ。絵が描ける人って羨ましい。
ぼくが今、手にしている三線「りん」は、彼が製作して名前はぼくが付けた。その「りん」という銘々を、こんどは林次郎の姉貴の秀子さんが気に入って、林次郎三線全体のニックネイムにしようと決めた。だから「りん rin」は、もはやぼくんちだけのものじゃなくなったのだが「三線親族」がぐっと増えると思うと嬉しい。というのも三線では一番重要な棹(そー)を作るときには、まず黒檀を二つに割る。一本の黒檀から二本の棹を割り出すわけで、この両者を「きょうだい」と呼ぶんだ。ウチナーグチでは「ちょーでー」か。ひらがなの「きょうだい」は、男・女の区別がないから、「りん rin」には、ずいぶんいっぱいの兄弟姉妹がいるんだと思うと、また気持ちが暖かくなるんだ、この冬の空の下でね。