「やさしいであれ」
九月三十日(日)
沖縄のシンガー・ソングライター、Coccoが沖縄限定のCD「ジュゴンの見える丘」を発売している。沖縄のショップから全国へ通販も可能だし、十一月二十一日には全国発売にもなる。この六月に辺野古沖に親子のジュゴン二頭が泳いでいるところをテレビ・クルーが撮影、沖縄で話題になったけど、Coccoはこの姿に感銘を受けたようだ。ウチナーンチュとして、今の沖縄の常態…たとえば政府による「飴とムチ」ってやつ…これに、もうしょうがないのかもしれないと思ったりしていたのだそうだが、海上ヘリの建設が予定されているまさにその海域を楽しそうに泳ぐ親子を見て、彼女はジュゴンというジ・アースの恵みにずっと付き合ってゆくことを決心する。それが「ジュゴンの見える丘」という歌になった。
「あなたにふりそそぐすべてが正しいやさしいであれ」とCoccoは歌っている。
彼女のオフィシャル・サイト
http://www.cocco.co.jp/ に、その歌、その発言、そしてあの二頭の姿が(今なら)見て、聞ける。
「審議委員」
十月二日(火)
TBSラジオの昼番組「ストリーム」が面白いと思う…とくに前半がね。ふざけたことを言ってるかと思うと、一気に政治の裏の話になって、もうボロボロのテレビ・メディアではちょっと耳にできない視点を与えてくれる。本日は(当然のように)教科書検定の問題が番組に登場した。例の「九・二九、沖縄県民集会」に十一万六千人が集まったというので、政府もすぐに態度を変えようとしている。その態度自体が沖縄差別、日本の支配構造が透けて見えるわけだけど、「ストリーム」の小西克哉キャスターによれば(ネタモトは珍しくテレビ番組=TV朝日、だそうだが)、検定の審議委員自身が、いわゆる「集団自決」問題に関して、もっと専門家の意見を聞いたほうが良かったと(テレビで)告白しているのだそうだ。審議委員って専門家じゃないの?
それで、「自決」に関して軍命がなかったという根拠は、たった一冊の『沖縄戦と民衆』(林博史著、大月書店、二〇〇一年)だそうで、でも著者の林先生によれば、そんなふうには書いていない、ちゃんと私の本を読め、と言っているのだそうだ。
これってメチャクチャじゃない?
実は、「審議委員の検定について、私たちは口出しはできないの」という文科省の主張に対して、それは違うんじゃないの?という指摘は、テレビ、ラジオに先がけて『沖縄タイムス』、そしてそれを受けた『週刊金曜日』など、紙媒体が書いている。つまり、
「安倍首相が辞任表明した日の『沖縄タイムス』朝刊。文科省がこれまで繰り返し検定意見は教科書用図書検定調査審議会が決定したものだとシラを切っていたものが、当の審議会の日本史小委員会の委員らによって『集団自決』に関する審議は実質行なわれていないと証言したことを報じた」(『週刊金曜日』二〇〇七年九月二十一日号、金城正洋さんによる記事から)
……政府は沖縄に対してこういうことをやってるのね。
審議委員が「調べる?」前に、職員(文科省の役人)が文書を提示する。その資料をもとにして「審議?」が始まるのだそうだが、報道を総合すると何もやっていないどころか、この常任職員が指し示した「事項」を、肩書はご立派な大先生たちが追認しているだけだ、ということが分かってくる。「ストリーム」の小西さんによれば、この常任職員は、例の「新しい歴史教科書をつくる会」と関連が深く、すなわちそれは安倍前首相とも…ということ。
戦後最大の沖縄大集会の、その怒り。十一万六千人。