「爪2」
九月二十八日(金)
ピック、じゃなくて「爪」なんだけど、この子がまた憎たらしくてなかなかいい音を出してくれない。三線の爪はペラペラなピックと違ってごろごろしてる。プロレスラーの親指みたいだ(といったってレスラーに近寄ったことはないけど)。その親指みたいなやつに自分の親指をちょっと突っ込んで弦を弾く。弦と爪のあたりどころが少しでも違えば、音も鳴りに変節が加わるのは当然で、当然なのはアタマでわかっていても、思いどおりにはならないのがアマちゃんの切なさなんだね。そして、そのガタガタぶりを分析するに、姿勢やら楽器の持ち方やら本日の気分やらがずいぶん影響しているようで、師匠先生たちだったら音としてほとんど分かりはしない程度のものが、われわれアマちゃんの場合は、株の大暴落みたいに慌てふためくココロの嵐。でもさ、オレって今日、ずいぶんいらいらしてんだな、ってことを愛の三線が教えてくれるから、安上がりの心理分析ってことで大いに楽しむことにしようじゃないの、って慰めてんのね毎日。
「十一万人」
九月二十九日(土)
宜野湾で「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が開かれた。十一万人という数字だった。石垣島などの先島でも郡民大会が開かれ、こちらは六千人ほど。県民の十人に一人ほどが大会に参加したことになる。戦後最大の、島ぐるみ大会だ。当然だろう。沖縄戦において日本軍が、渡嘉敷島などで「集団自決(強制集団死)」を命じたことはなく、幼児をふくむ一般のウチナーンチュが自発的に死んでいったんです…そんなこと、ありえねーだろ。教科書に、日本軍により命令や強制といった記述を削除させる文科省の一連の説明なり言い訳なりを聞くにつけ、「悪意」ってこういうことなんだとわかる。平然と嘘をついて、その嘘を真実のように見せかけて、でも沖縄からの声が大きくなると「これは私たちがやったことじゃない。検定は別ものだから、私たち文科省は手が出せない」…だからこの削除の指示は生きたマンマ。ふざけんなよ。
大阪。難波市民学習センターで歌の話をしたあと、上田康平さんや大矢和枝さんたちと一緒に伊礼正哲さんの「琉球」でこの県民大会のことを語り合う。実はセンターでも沖縄差別のことになって、ウチナーンチュとして過去にばっちり差別を受けてきた大矢さんもいろいろな経験を語ってくれたから、「琉球」ではそのパート2、って感じか。こんどみんなでアマチュア音楽軍団を作ろう! なんて盛り上がる。
明日三十日は、上田さんや大矢さんが中心になって「沖縄の宴」(稲荷山神社)が開かれて、伊礼さんやその美形の娘さんたち(サンクルバーナー)が沖縄の歌をうたう。沖縄戦の講演もある。こんな地道な活動を、この人たちはまったく普通のようにずっとやってきたのだ。文科省の「悪意」のない澄んだ心でね。
ウチナーユンタ
使用メロディ・安里屋ユンタ、作詞・藤田正
(オリジナルの歌詞)
さぁ 沖縄よいとこ いちどはおいで
サーユイユイ
春夏秋冬 野山に花が咲く ○はるなつあきふゆ
マタハーリヌ ツィンダラ カヌシャマヨー
さぁ ヤンバルよいとこ 辺野古にジュゴン
サーユイユイ
キャンプ・シュワブ 消えゆくサンゴ
海は宝だ ウチナや誰のむん
さぁ 嘉手納はよいとこ ジェット機ゃ吼えて
サーユイユイ
ヘリは落ちても アメリカー笑い顔
またイラクへ 爆撃 テロリスト
さぁ 島は渡嘉敷 いちどはメンソーレ
サーユイユイ
「自決」は誰の手 おばぁはナダうとぅす ○涙を落とす
いまだ終わらぬ ウチナのいくさごと
さぁ 白いサンゴは 悲鳴のしるし
サーユイユイ
「長寿の邦」に メタボと自殺
チバレ、ウチナーよ 観光と基地の島 ○気を張る、頑張れ
(九月二十二日「新説・ウチナーユンタ」再校正)