9月20日 しょうちゃんの蛇に三線/藤田正
「一人ぼっち」
九月二十日(木)

 りんけんバンドの照屋林賢さんは天下に知られた三線の名手だ。照屋家は音楽の家系なのだが、ボーカリスト主体の他のおうちと違って、プレイヤー指向が強いというか工学系というか、変則楽器は作るわデジタルものは大好きだわ、相対的に「うた」のパーセンテージが低い。林賢さんにしても歌手じゃない。歌以外は何から何までこなすのに、「歌と三線は一体」という島の常識をくつがえしてそれがどうしたという顔をしている。歌は、上原知子さんやバンドの男たちに任せておけば充分、なのだ。こういう林賢さんの考え方が、一九九〇年代の沖縄ポップスの中心にあって、それが結局はブームを造り出していったのだと思う。つまり伝統の、どこを守って、どこを変えるか? ということだ。りんけんバンドが結成されたころ、ロック・バンドと一緒にステージに立つと、決まって「帰れ」「邪魔だ」のコールが起こったというから、ぼくらの常識っていかにいい加減かってことでもある。非難を浴びながら活動を続けて、そして人気の火がついて、ブームを起こして…気がつけば照屋林賢という人は今や沖縄音楽の中核の一人だもの。ワン&オンリーでしょ、この人。そしてこの人、(繰り返すようだけど)シンガーじゃないのね。すっごい常識外れが、沖縄音楽のど真ん中にいる。それが伝統の中の今日、なんだ。アメリカン・ポップのプリンスにしても、まるで一人ぼっちの変態みたいな人だけど(最大の誉め言葉です)、ジミ・ヘンドリクスにしてもそうだけど、伝統を築くカナメにいる人って一人ぼっちに見えるのね、ぼくら凡夫には。かの故・嘉手苅林昌さんにしても、ばりばりの若い頃はどんな人だったのでしょう? 今や大レジェンド、神のような評価だけどね。
 照屋林賢さんによる教則CD『沖縄三線入門』をついに取り出す。
 林賢さん指導によるこのCD、「簡単」「だれでも弾ける」と題名にあるのだが、これは、取り掛かりの部分だけを言えば、よなは徹のDVDブックよりは難しい。さっさと先に行ってしまうからだ。肝心なところだけを伝えて、はい、あとは練習しようね、三線なんて簡単だよ…林賢さんがいつも口にしているとおりのCDなのだ。りんけんバンドが島でブレイクしたきっかとなった「ありがとう」などが練習曲なんだけど、彼の作るメロディ・ラインってかなり単純化されていて、高齢者からチビちゃんまで全世代が楽しめる音楽をやろうとしている彼のポリシーが、三線を練習しながら伝わってくる。その点で言えば、クラシカルな徹先生のDVDブックの指向性は実はとても難しい。そして林賢さんのは、沖縄島唄のモダン化なのだった。

( 2007/09/21 )

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