「フレットレス」
九月八日(土)
朝のTBSラジオで永六輔が、亡くなった中村八大はピアノを練習するとき部屋を真っ暗にしてた、と生前のエピソードを披露していた。中村八大って、永さんと一緒に「上を向いて歩こう」などの作品を遺したジャズ・ピアニストだ。八大さんはジョージ・シアリングがヒーローだった。そのシアリングは盲目だったから、八大さんは師と同じ環境で腕を磨こうとしたのだそうだ。
八大さんのこのエピソードが、本日のぼくにしっくりときた。わかる! ん〜わかっちゃうぼく〜…とアマちゃんは、すぐに嬉しくなってしまったのだ。というのも三線はフレットレスだから、いくらでもぐじゅぐじゅの音になる。それだからこそ、姿勢のみならず、左てのひらの棹(ソー)の支えどころ、胴(チーガ)&ツメを持つ右手の関係など、先輩諸氏から「きちんとしておけ」とうっせーほどに指示されるのは、音楽以前に、まずは「音をズラさない」ための予防策なのだ、とぼくは少しはわかるようになった。その時に耳にしたのが、八大先生暗闇練習情報だった。へぇ中村八大もそんなことしてたんだ、ぼくは思った。状況を同じくして集中する。徹先生の指導も適切、林房の三線も立派、でもここにいる練習生一人がベトベトの音を出している、という毎日。涼しげに、真正面を向き弾きましょうと言われてもなー、まともな音がでないんだから、「彼」はいつの間にか左指を見ながら、エンヤトット・エンヤトットして汗ばっかりかいている。だーからよ、そこでさ、このぼくがふと気づいたのが、目をつむることだった。目で見て確認できたら改善される、というのはウソ、見ないでいたほうが気持ちが一つに固まって、自分がどれほど間違った音をぶっ放しているのかが知れる、ってことなんよ。やるべきこともわかる(とシロートなりのディスカバリー)。八大さんも、そうやってたのかな。