9月3日〜9月5日 しょうちゃんの蛇に三線/藤田正
親指
九月三日(月)

 よなは徹は若手のホープだ。ぼくは彼のDVDブックで練習している。繰り返し画像を見て、彼の楽器の構えやツメの持ち方、背の伸ばし方などをチェックしている。もちろん一番注意しているのは指の押さえ方、音の鳴りなのだが、そこでグッとソー(棹)のアップ…この画面を見て、なるほど鍛錬を積んだ人は違うと思った。つまりソーを支えている左手、その親指の上部はソーの裏側からこちらに覗いて見えるのだが、これがプレイ中であるのに動かないのだ。反対に、左手の人差し指と中指と小指はアッチャ行ったりコッチャへ戻ったりと激しく右往左往しているくせにテノヒラでつながっているはずの左手の親指だけが歌口(ヘッドの弦を支える部分)の裏側で、すましている。ということは左手は五本の指をめいっぱい広げて、先の三本だけが細長いソーを右っ! 左っ! と動きまわりジャンプし汗をかいていることになる。親指のクールな感じ、かっこいいなー。うらやましーなー。
 ピアノにしろギターにしろ指の広がりは、必ずや体験せねばならない隠れたキーの一つだ。そんなことは知っている。でも自分史として、アマチュアにしか味わうことのない発見、それをここにシルシておこうと思ったしだいなのだ。
 歌は、照屋林助のレパートリーから盗むことに決める。
 ドルドルドンてぃば ドルドルドン…まずはこの歌から。
一週間
九月四日(火)

 判佝如覆┐い靴紊辰僂鵝砲痢悗茲覆賄阿了粟教室』がぼくの先生。表紙には「一週間で基礎をマスター」とある。
 素人というのは夢ばかりが大きいから「一週間」の文字が目に入るや、テレビや舞台で楽しそうに歌ったり楽器を弾いたりしている玄人さんと自分を重ねてうっとりしてしまう。一瞬でもね。そんな自分が可愛いし、その気持ちがどこかになくては長い道のりなどやっていけるわけがない。それで、「一週間で基礎をマスター」の「一週間」なのだが、ぼくは五日目にして(ようやく?)「そういうことか」と気づいたことがある。このシロートさんは「基礎」なる単語にまるで意識が向いていなかったのだ。本には徹が考える「基礎」が載っていて、そこだけだったら一週間で何とかなる、と彼は言っている。互いの間にあるミゾ!
 気づいたのは、それが実演の部であれば、二つしかないということ。すなわち「老、尺、老、工」と「老、上、老、尺」。この繰り返しのニパターンの指使いをきっちりやりなんせ、なのだ。後者は特に難しい、というよりも(指の付け根の関節が)痛い。
 でも少しずつ上手くなっているようでもあり、そこでこのシロートさんはまた夢を見るのね。ドリームやカム・チルー?
不自由
九月五日(水)

 三線の特色を語ると話は尽きない。その一つが、不自由だ。三線は現代のギター類などと比べれば、ボディは蛇皮で扱い憎いし、チューニング部の構造も原始的。そして今の全世界の歌…それは欧米の、という言い換えもできるだろう…とまるで合わない南島の古風を保っている。例えば(練習の手を止めて)三線を膝の上において、テキサスのディキシー・チックスのアルバムなんかを仮に聞くとしますね。そうすると人間って自然とチックスの伴奏をつけようかなんて意識が働くものだけど、そこでハッタ、三線ってコード・ストロークでジャンジャカやれるわけもなく、ちんまりポツンポツンと単弦奏法が原則なのだと気づくのだ。アマちゃんはそこがとっても寂しいんだ。「世界にぼくは参加できない!」という寂寥感。遠い遠い距離感。三線は不自由な楽器だと思う。でもさ不自由という考え方は、やっぱり「向こう側」から得たものであって、沖縄・三線側からの発想じゃない。なぜ三線はそうであるのか。そうであり続けるのか。ひねくれているんじゃなくて、つまり三線と沖縄には確固たる「自分」があるということなのだ。単弦の、ひとつひとつの音を出すことが、こんなに難しいこととは思いもしなかった。

( 2007/09/06 )

3月3日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「篠原有司男2」
2月2日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「りんぼー祭」
10月30日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「地図にない村」
10月12日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「2010年の琉フェス」
9月29日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ペルー大使館」
8月22日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「Dチラシ」
6月20日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「誠仁師 in 東京」
6月19日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ひとがら」
6月9日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「おへんろ」
6月3日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「タトゥー」
5月31日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「かたる」
5月20日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「かっちゃ」
5月11日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ふたなよしひ」
4月30日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「タトゥー・セラピー」
4月28日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ロベルト・杉浦」
4月21日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ブロック・パーティ」
4月17日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.7」
4月16日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.6」
4月15日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.5」
4月14日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.4」
4月13日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.3」
4月12日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.2」
4月11日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「第2回 コザ・てるりん祭 photo by 森田 寛 vol.1」
4月10日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「うちなーからじ」
4月2日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「モーリー」
4月1日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「2回目のてるりん」
3月19日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「遁ぎれ、結婚」
6月4日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「てるりんパン」
5月30日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「上原直彦」
5月25日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「クレイ」
3月30日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ゆきー」
3月28日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「マニー・オケンド」
3月23日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「よしもとパワー」
11月24日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「カムイ伝講義」
11月20日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「アレックス・コックス」
11月14日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「竹田の筑紫さん」
10月2日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「日比谷と半蔵門の」
9月1日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「知念大工・二〇〇八」
8月21日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「Wヤング」
8月16日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ウークイ」
8月14日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ウンケー」
8月8日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「大久保公園」
7月23日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「あんやんてぃんどう」
7月17日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「誠仁先生」
7月15日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「宮城島」
7月10日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「廻る命」
7月8日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「サカイトオル」
7月7日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「朝大さんの後輩たち」
7月6日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ダリの沖縄」
7月1日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「四味線の脅威」
6月1日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ひみつ会議だ」
3月31日〜4月3日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「園田青年団」
3月21日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「かぎやで風」
3月19日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ディスク・ガイド」
3月12日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「腱鞘炎」
2月25日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「30周年」
2月23日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「記者会見」
1月4日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「伽羅」
12月30日、12月31日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「真南蛮」 「えにし」
12月27日、12月28日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「マスク」 「せんゆう」
12月22日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「浅草寺」
12月20日、12月21日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「調子笛」 「ちむぐくる」
12月14日〜12月16日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「コザ、コザ!」
12月11日、12月12日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「ひさしぶり」 「鏡よカガミ」
12月6日〜12月9日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「五十回忌」「市民病院」「篠原有司男」「河合谷小」
12月4日、12月5日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「琉ぬ風」 「オモテの拍子」
12月1日、12月2日 ≪しょうちゃんの蛇に三線≫
 「孝行イモ」
『照屋林賢のだれでも弾ける簡単沖縄三線入門』
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