「バビロンに交響する、鼻唄と絶唱の地下放送!…」
ソウル・フラワー・ユニオンの新作『ロロサエ・モナムール』には、こんなキャッチ・フレーズが踊っている。2005年の日本とは思えないような硬派な言葉遣い…SFUの、スタジオ録音&フルアルバムとしては、4年ぶりの作品である。
すべては現場から。リーダー&ボーカル&プロデューサー(そして大半の楽曲の作者)としての中川敬はそう言う。東チモール〜ドヤ街〜イラク〜反戦集会…社会の歪みやユガミを、ミュージシャンとして真正面から受け止めた時、このようなどっしりとした作品となった、そう『ロロサエ・モナムール』は語っているかのようだ。
もはや世界から忘れ去られる存在となりつつある新生国家、東チモールから届けられたラストの「星降る島」へ向かって、中川は直球を投げつづける。2曲目の「アル・ファジュル」という題名がアラビア語で「夜明け」を意味し、それは米軍の
ファルージャ総攻撃の作戦名であることを知る時、中川&SFUが何を見ようとしているかが、はっきりと分かる。音楽的な姿勢に変化はないが、ここ数年の彼らの「旅」の集大成的な作品と言うことができるだろう。
言葉を尽くし、バリバリと歌い上げるこの65分を「重い」と感じるかどうかは、聴き手の「今、生きている環境」に負うところが大きいはずだ。
(藤田正)
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