大城美佐子は、かつては
嘉手苅林昌とのデュエットで知られた女性。絹のような声の持ち主、オンナ・カディカル、などとと言われて、それだけ彼女のボーカルが素晴らしいということなのだ。
本アルバムは、本土のレコーディング・ビジネスの真っ只中にいた売れっ子のエンジニア、上原キコウが故郷の糸満へ帰り、初めて手がけた本格的な島唄録音だ(昨年の
ソウル・フラワー・モノノケ・サミットの沖縄録音も上原)。
このレコーディングに関しては企画の段階から上原に話を聞かされていたこともあって、その出来具合を期待していたが、本当にいい作品に仕上げた。なかなかスタジオに入ろうとしない大ベテランの大城を口説いたというのも大変だっただろうし、また、完成に至るまで何度も何度も録音をやり直したことをぼくは知っている。
先日の辺野古で開かれた「
Peace Music Festa! 辺野古’07」に美佐子さんが出演して(24日かのトリ)、その時に上原とも話をしたが、もうやめよう、と思ったことが何度かあったそうだ。それほどに熱意がある、妥協できない、ということなのだろう。ウチナーンチュとして彼は島唄の録音にもの凄く異論があり、それをオレが変えたいと力説している彼だが、果たして美佐子さんの『唄ウムイ』は成功だったと言えるだろう。
三線、琴、そしてボーカル…これらの音の質が、とにかく素敵。
一聴、とっても地味な内容だが、夜が更けて聴くこの一枚は、ちょっとたまらない切なさだ。
共演に
知名定男(琉琴も)、名護良一ほか。彼らも、いいノドを披露している。
そしてこんなに渋いアルバムが、沖縄ではヒット・チャートに顔を出しているというのも、ウチナーはいいねー。
(文・藤田正)
amazon-
『唄ウムイ/大城美佐子』
amazon-
『デラシネ・チンドン/ソウル・フラワー・モノノケ・サミット』