りんけんバンドのリード・ボーカリストとして活躍する
上原知子が、ようやく島唄集のアルバムを完成させた。
彼女のアルバムとしては5枚目。プロデューサーは
照屋林賢。曲目はタイトル・ソングの「多幸山(たこうやま)」を1曲目に、「前ン田節(めんたーぶし)」「海ヤカラー」「いちゅび小節(いちゅびぐわーぶし)」「与加奈ヨー(よーかなよー)」…と、沖縄の伝統歌謡に親しんでいる人には定番中の定番曲が収録されている。たとえば東京の島唄系飲み屋に行っても、必ずや耳にするような有名曲を
上原知子がどう歌うか…なのだが、もうこれは彼女がカゼでもひかない限り、抜群なのはわかっている。ゆえにこのアルバムは、とってもいいっす。
ちなみに、りんけんバンド大好きな人たちであれば、たまに彼女が(林賢の太鼓をバックに)1、2曲、島唄を披露している場面にめぐり合ったことがあるはずだ。素晴らしいよね〜、知子さんの歌三線。なにしろ(ジャケットに写っているように)彼女はちびっ子の頃から、ファミリー・グループ「
糸満ヤカラーズ」で大活躍し、りんけんバンドに入る前までに、すでに親のために二軒の家を建てちゃったってんだから、どれほどの存在だったかがわかろうというものだ。言っておくけど、彼女は酒が絡むような夜の「社交場」で歌った経験がない。引っ張りだこだったのは、新築祝いや結婚式といった明るい場所。それだけでしっかりと蓄財できたヤカラーズであり、知子さんだった。
そんな
上原知子の特色は、声も三線も、まさに「強い」こと。一つ一つの音に、重量感があることだ。
「女だから」といって、シナを作って歌うような感性が彼女にはない。そのきっぱりとした姿勢は彼女の生き方の反映なのだろうし、これが長年の歌人生の中で、たっぷりと熟成されて「知子だけの音」になっている。
そこがお見事なのだ。今回の島唄集は、歌・三線・太鼓だけなので、そのような彼女の特色があますところなく捉えられている。歌詞や三線の「手」のそこかしこに、彼女らしい変形なり解釈があるのも、しみじみいいです。
面白いのは太鼓も
上原知子が担当していることだ。つまり多重録音。島太鼓の上手もファンには知られているが、知子さんも林賢さんも決して他人には任せたくはなかったのだろう。まぁいいんじゃない?…のユル〜い沖縄じゃなくて、潔癖で、ゆずることのならぬシビアな沖縄スピリットがこのアルバムの骨格にあるようだ。
(文・藤田正)
*CD発売=2009年1月26日(iTunesではすでに配信中)
上原知子CD〜アジマァのサイト
http://www.rinken.gr.jp/
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