彩風(ayakaji)は、ボーカルの仲田かおりと、サウンド担当の島尻哲明によるユニットで、仲田の涼やかな声と穏やかなサウンドが何よりの特色だ。
『彩花』は彼らのセカンド・アルバム。タイトル(ayapana)の発音が示すとおり、二人の出身である八重山(石垣島)をそのイメージのベースにしているようだ。
沖縄のヒーリング・ポップは、女性であれば元
ディアマンテスの千秋(現・
しゃかり)を筆頭にして十数年前から大きな潮流となり、今では沖縄音楽の中心をなすと言えるまでになった。彩風もその流れの中にあるユニットだが、仲田のきりりと締まった高い声質が他と一線を画しているところがいい。今回の『彩花』(2010年6月発売)は、「命花」「花(すべての人の心に花を)」など
「花」を題名に使った新作、定番曲を集めた企画もので、仲田〜彩風の特色が際立った作品に仕上がっている。
6月5日、その仲田に会った。彼女は彩風プロジェクトが立ち上がる前までは、(歌は大好きだったそうだが)プロらしい活動はしておらず、その好きな歌にしてもドリカムだったりと、伝統的な歌謡とはさほど深い縁はなかったと語っていた。そう、ごく一般的な今の沖縄の女性である(…ずっと島唄をやってきましたという人の方が特異なのだ)。
だがいったん八重山〜沖縄を意識し、あるいはテーマにした歌をうたい出すと、ボーカルのモードが変わったのだそうだ。彼女自身、その変化は不思議だと言っていたが、メジャー・デビューというきっかけを得て「もう一人の、島の娘としての自分」が開花したのだろう。素敵なことだ。
佐原一哉らしいセンスが光る「命花」を1曲目に、「沖縄に花」という太平洋戦を遠くに見ているような哀歌をふくめ、静かに時は流れる。
新良幸人〜
パーシャクラブの名歌の一つ「赤ゆらの花」(
宮良長包の同名作品とは別)の、あえて低い声でうたう仲田の姿勢も成功している。
(文・藤田正)
amazon-『彩花』