ファルージャからメールが来たけど、「空爆がすごいからまたあとで!」というものだった。寝ようと思っても眠れない。朝刊を見た妹が「ファルージャの人たちが避難している映像を流すべきだ」と言ってきた。米軍の空爆がずっとずっとずっとずっと無差別に行われてきたことをテレビで言ってくれ、と言われた。
スンニ・トライアングルなんて、もう古い。そんなのいつの話? なのに、テレビも新聞もそんな時代遅れの死語をもっともらしく使ってる。イラク戦争を戦ったイラクの兵士たちはスンニト・ライアングルと言われたエリアで、シーア派、クリスチャンの兵士と同じ塹壕で生死を共にしていたという。「スンニ・トライアングルって何だ!?やめてくれ」と元兵士は怒っていた。スンニ・トライアングルってのは米軍の都合に合わせた言い回しなんでしょ?
これは「ファルージャ被害者の会」だ。ムジャヒディンの正体は「ファルージャ被害者の会」なのだ。ファルージャの人たちは数ヶ月前、ファルージャに潜む外国人武装勢力の情報をイラク暫定政府に流していた。確かに数百人の外国人を逮捕している。にもかかわらず、米軍は無差別攻撃を続けた。今はもうザルカウィもファルージャからいなくなっただろう。もし彼が3年前に死んでいなければ…の話だが……。米軍は意味のない家宅捜索を続けた。何も見つけられなかった家でウンコをし、それをコーランで拭いては民家の壁になすりつけていった。こんなことが1ヶ月に6回も繰り返されたりしていたのだ。私たちがイラクに近づけない間に、とんでもないことが繰り広げられていた。
そして、外国人武装勢力はファルージャの人たちを拉致誘拐している。私の知人も拘束された。理由は、「外国人と接触している」ということだ。つまり、私との接触だ。彼は無事に戻ってきてくれた。けれど、この先も無事とは限らない。どうしたらいいのだろう。
イラクの人は外国人武装勢力に怯え、世界中から集められた占領軍に虐げられ、爆撃され、世界中のセキュリティママから「イラク人=テロリスト」思われている。
ファルージャの人たちは言っていた。こんな無差別攻撃をされる覚えはない。要するに、米軍はラッキーなことに、この砂漠地帯に手つかずの油田を発見してしまったから、どうしたってアンバール州を制圧したいんだろうよ、と。
(文・高遠菜穂子)
*この文章は、「
非戦音楽人会議」のメンバーへ送られてきたものです。
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