ソウル・フラワー・ユニオンとの共演作品という側面もあった前作と異なり、本アルバムの眼目は、登川誠仁の歌のコクや、リズム感をじっくりと味わってもらおうというもの。
彼独特の三線(彼の場合は六線)のタッチや、歌い方にもかなり配慮して録音されているから、大きな音量で聴けば聴くほど、この人のスゴ味が感じ取れるはずだ。
遊女の嘆きのバラード「辻千鳥(ちーじ・ちじゅやー)」、昔ながらのお笑い歌劇「無学のおじさん」、故・
嘉手苅林昌に捧げられた「酒ぐせ口説(くどぅち)」、孫娘たちとうたう新作「じいちゃん ばあちゃん」と、バリエーションも豊か。古い伝承歌から、新作まで、これほど自在にうたいこなせるシンガーは、なかなかいない。
登川誠仁、いよいよ「独壇場」。そんなアルバム『スタンド!』である。
また、このアルバムとほぼ同時期に発売されたのが、新潮社からの『オキナワをうたう 登川誠仁自伝』である。
貧しい家庭に生まれたヤンチャ坊主が、戦乱の沖縄を生延び、どのようにして島唄のナンバー・ワンとなったのか、その70年を克明に描いた単行本だ。