「僕たちは甘えすぎて、うわべ
だけの心配して、ごめんね、
きづくの遅くて」
うららかな春の光の中で、RIZE(雷図)の
JESSEがギターを抱えて歌っていた。5月4日の昼下がり。場所は都内の公園の一角。
JESSEのそばには笑福亭鶴瓶やCharがいて、みんなが静かに彼を見つめていた。
ミクスチャー系という、ま、言ってみれば「かなりうるっせーロック」の人気ボーカリストが、声をひそめるように、だが顔も胸も真っ赤にして訴えたのは「
ハイチ地震の悲劇」だった。チベットやチェチェンの惨状と同じように、彼は「オレたちのこととして」、カリブ海の小国に起こったことに「気づこう」と歌い語った。
必死。彼、マジに涙ぐんでた。でも売名行為と思われたくないから、仲間だけに声をかけての小さな集会。そう、地域、友人など、ローカル・コミュニティを基盤にしながら世界とつながろうとする試みは現在のポップ・ミュージックの一大潮流であり、
JESSE(そしてRIZE)はその実践者として各種のイベントを行なってきた。
デビュー10周年を迎えたRIZEの最新作品にもその意思は貫かれている。
タイトル・ソングは準メンバーともいえる市原隼人が主演する映画『ボックス!』のテーマ。大いに笑いながらの爆音行進曲という感じだが、思い切りのいいジャリジャリしたサウンドが、ミクスチャーどころかモロに正統派ロックだ。今や「ロック」といえば我がジャパンでは「アイドル歌謡曲」の別名と成り下がっておるのだから、あんたら、ほんまに頑張ってください。スカムバッグなどイケない言葉頻発の「人間合格」から「GOLD RUSH」に至る3曲連続の<吐き捨て系騒音ミュージック>は、いかに彼らが現代社会を肌で感じるているかを証明する。大好き。
(文・藤田正)
*初出:週刊「金曜日」 2010年5月21日号
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