明るいエイズ・ソング「ディマクコンダ」by山田耕平
Epic/Sony
 東アフリカにマラウイという国がある。この国のことを国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員だった山田耕平さんが次のように紹介している。
「人口は1100万。HIVの感染者は、国民の14.4%、約90万人が感染しており、年間に約87万人がエイズにより死亡、新規感染者110万であります」(数字は原文のママ)
 現在のアフリカといえば、ただちに「HIV/AIDS」という言葉が思い浮かぶほどに、その感染や発病の問題が諸国家の根幹を揺るがすまでになっている。
 そして、マラウイも、同じようにHIV/AIDSが大問題となっていた…協力隊員として現地に派遣された山田耕平さんは、そんな場所で自分は人々のために何ができるのだろうか、と考えたそうである。
 歌で啓発すること。そう彼は、自らが歌をうたいながら、「VCT」と呼ばれる「陰性・陽性を問わず、エイズに関わるさまざまなサービス」を得るための「検査とカウンセリング」に勧誘することを思いついたのだった。
 …と、これだけだったら、そういうこともあるんだろうな〜、で終わりそうな感じだけど、この「ディマクコンダ(愛してる)」が同国のヒット・チャートで1位を獲得し、今や国内で誰もが知る愛唱歌にまでなっているのだそうだ(制作は2005年)。これは素晴らしいことである。
 ぼくも昨年、ニュース番組で山田さんの人気ぶりを観たことがあったが、不覚にも、日本でこの歌のCD(+DVD)が発売されていることまでは、先日まで知らなかった。
 ということで、山田耕平さんの歌う「ディマクコンダ」を紹介するのだ。
「ディマクコンダ」は、「若いカップルを襲ったHIV感染のケースを通じて」(JICAの記事から)、カウンセリングを受ける必要性を訴えた歌である。作詞(原詞)も、そしてボーカルも山田さん自身が担当し、使う言葉も現地のチェワ語である。
 そのサウンドは、コンゴ(西アフリカ)のリンガラ・ポップと同系列の、キラキラと光るようなギターの音色が特色だ。みんなで一緒にダンスができるような優しいリズム。ここに「愛してる(ディマクコンダ)」の言葉が何度も何度も繰り返される。
 若いカップルはVCTプログラムを受けるが、男性はHIVポジティブであることが判明! ああ、神様、ぼくら二人の仲は!…というのがストーリーだ。最後にオチがつくのだが、それはここで書くのはヤボってものなので、ぜひCDか、DVDの映像で体験してもらいたい。アマチュアの山田さんではあるが、とっても心温まる歌なのだ。
 実は、ぼくが原稿を書いている2007年1月というのは、日本でHIV/AIDSが広く知られるようになってから20年目の節目である。
 87年の1月、神戸で、日本人で初めての女性のAIDS患者が報告され、全国的なニュースになった。当時は、この病気についての誤解、偏見が今よりもさらに大きく、そのために感染者、患者さんたちは本来であれば負う必要のない苦しみまで味わうことになった。
 87年はまた、政府がエイズについての正しい知識の普及啓発、検査・診療体制の充実等を盛り込んだ「エイズ問題総合対策大綱」をまとめた年でもある(同年2月)。
 で、そのあとどうなったか。山田さんは言う「先進国の中で唯一新規感染者数が増えている」(引用はすべてCD解説から)のが日本である、と。
 そう、とんでもない事態が起こる前に、ぼくらもきちんとした知識が必要なのだ。そう思いませんか?
(初出:月刊『部落解放』2007年3月号)

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( 2007/04/06 )

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山田耕平
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