ロウ・ライダー・ミュージックの雄、サルソウルの旗手、ラップの元祖、
ブーガルーのヒット・メイカーと、時代によって様々な顔を持つ
ジョー・バターンの再評価が始まっている。
2月には、60年代サルサ&
ブーガルーのビッグ・ヒットとなった『ライオット!』(写真、68年)がCDとして日本盤となり、続いて『セント・ラテンズ・デイ・マサカー』(72年)がリイシューされる。
このほか最近の新録やDVDも日本でリリースされるなど、これはカルト的な人気を持つバターンが再浮上する兆しなのだろうか。
『ライオット!』は、60年代の新興
ファニアを一気に注目のレコード会社に引き揚げた大ヒット作。その題名、そのヤバげな「暴動!写真」が当時は大きな問題となったアルバムだが、スパニッシュ・ハーレムのヤクザ者から人気ミュージシャンへ転身した人物だけに(?)、あの地域に充満するストリート・ミュージックもろもろが絶妙にブレンドされてアルバムに詰め込まれている。元気一杯のサルサ&
ブーガルー、ドゥワップ・コーラス、ラテン風味のソウル・バラード…と、売れに売れたとがよくわかる作品だ。
「ワット・グッド・イズ・ア・キャッスル」「マイ・クラウド」「オーディナリー・ガイ」などの代表曲も収録。
『セント・ラテンズ・デイ・マサカー』は、サルサ路線を突っ走り始めた
ファニアにあって、ほぼ一人、独自の「ラテンwithソウル」の道を貫いていた時期(72年)の作品。『ライオット!』の流れにあるアルバムだが、
エディ・パルミエリや
ウィリー・コローンのフォロワー的な臭いもだいぶ消えて、確立されたバターン・サウンドを楽しむことができる。
今もライブでやってる「アイ・ウィッシュ・ユー・ラブ」「イフ・アイ・ワー・キング」ほかを収録する作品だが……なんといっても目を引くのがタイトルにある「大虐殺」のジャケット(噴水の写真)。よーやるわ、って感じ。映画『シャフト』『
スーパーフライ』と時代感覚がリンクする危ないストリート系のイメージです(その「シャフトのテーマ」もカバーしていて、これがまた捨てがたい!)。
そしてバターンはこのアルバムのあと、サルサ+ソウル、すなわち「サルソウル」という言葉を生み出し、70年代ディスコ・ブームのスターの一人となってゆく。
アルバム『ザ・メッセージ』は、2006年に日本でリリースされた「オレは、まだ頑張ってる!」というファンには吉報のニュー・アルバム(つい先日、さらに新作が出たというニュースあり)。最近は西海岸のロウ・ライダー系、
チカーノ系の諸君に高く評価されているバターンだが、それを意識しての内容になっている。
同じくライブDVD『ライヴ・イン・サンフランシスコ』も同時期に発売されている。これはやはり西海岸の、それも日系の若者たちが頑張って制作した作品のようだが、いかにもローカル・ショウという風情が「泣けてくる」とファンには絶賛された作品。大ヒット「ジプシー・ウーマン」ほか往年の作品がずらと並び、バンドが何だかヨレッてるのもバターンならではの「味」。
(文・藤田正)
*この2007年の春以降、バターンほか、60年代の
ブーガルー系のアルバムがV2/コロムビアから次々に発売される予定だ。
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CD『ライオット!』
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CD『セント・ラテンズ・デイ・マサカー』(2007年4月18日発売)
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CD『ザ・メッセージ』
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DVD『ライヴ・イン・サンフランシスコ』