約3時間、登川誠仁という芸達者の技を存分に見せてもらったライブだった。
しかし、コンサートはこれで終わったわけではなかった。
登川流の最高幹部である照屋正雄が、場つなぎをしたあとの第3部では、知る人ぞ知る誠小の舞踊「浜千鳥(ちじゅやー)」が登場した(写真)。
どよめく会場もなんのその、登川誠仁という女形(おんながた)は、堂々と千鳥鳴く浜辺の淋しさを踊り切ったのである。
コンサートのあと彼に話を聞けば、こういうような一人だけの舞台は彼にとって極めて珍しく、どのようにお客さんへ芸を届ければいいのか、ずっと悩んでいたのだそうだ。
できれば、この5倍ほどの時間をもらって自分のレパートリーを思い切り披露したかったほどだとも。
「でも、お客さんがぶっ倒れても困るからね」
そう笑った登川誠仁の顔には、長時間の疲れなどまったくないように見えた。
(文・藤田正)