ディアマンテスの
アルベルト城間がキッズ・ソングに新境地を拓いている。
沖縄最大のキッズ・ヒットといっていいかも知れない「
琉神マブヤー〜魂の戦士」を歌ったのが彼(作曲とプロデュースがパーシャの
上地正昭)。
ディアマンテスの顔として、またソロ・アーティストとして20年も沖縄-日本で活躍するアルベルトだが、ここにきて子ども向けの歌を立て続けに発表している。
最新作は「おにぎりパパ」(曲の提供)。この歌は、ロンドンブーツ1号2号の田村亮が監修し、杉浦太陽、勝俣州和、バカボンのパパ、的場浩司、ボビー・オロゴン…といった人たちがボーカルを披露する『家族時間』(同シリーズの3枚目)に収録されている。
「
琉神マブヤー」のヒットのあと、2月から3月にかけてはNHK「みんなのうた」で「忍者ネギ蔵」でそのダイナミックなボーカルを聞かせたばかりのアルベルト。このあとに続くのが「おにぎりパパ」だが、依頼を受けてたったの3日間で作ったのだという。
「田村亮さんが監修して、パパたちが主人公で、<We are the world>のようにみんなが歌い合える」
企画の説明はこの程度だった。悩みに悩んで、プレゼンの当日、家族の用事で出かけた千葉行きの車内でもメロディを歌詞をブツブツとひねり出していたのだそうだ。
「隣りの席に座ってる娘たちも、いったい何をしてるの?という感じだったみたい。オニギリ、オニギリとか、ずっと歌ってるわけだし。でもそれも<家族の時間>でしょ。お父さんが電車の中でも、唸りながら仕事をしているのを観ている。子どもたちに<オニギリマンがいい? 題名はパパのオニギリがいいか>なんて相談しながらね。結果として仕上がったCDを家に持ってきたときの、子どもたちの目が輝きってなかった」
「<おにぎりパパ>には一つの物語があって、それは3年前かな、長女のモニカが中一の時のことだった。ぼくは妻と大阪へ行く用事があって朝早くに電車に乗る必要があったんです。そしたら長女がぼくらのためにオニギリを作ってくれていた。
これって親として、たまらないでしょ。
モニカはお弁当を毎日作る人なんだけど、ぼくに向かって<こんどはパパのオニギリが食べたい>なんて言うんです。この気持ち、嬉しいよ」
かくして「おにぎりパパ」が完成したのだという。
「親の気持ち、子どもの気持ち、いっぱい入っている歌だと思います。ぼくが
ディアマンテスで作ってきた歌はみんなストーリーがあるんだけど、これもそうです。ただ楽しいという歌じゃない。ぼくの作品として一番かもしれない」
取材中、そばに一人の若者がいた。アルベルトの故郷であるペルーから来たばかりという福崎エリックである。19歳。アルベルトの後輩で、アルベルトと同じく日本でプロ・シンガーを目指している。
「もの凄いうまいよ、彼は。ペルーの日系の人たちは、日本の音楽をいつも情熱を持って聞いて歌っているから、日本にいる人たちと受け止め方が違うんだよ。だからその中で鍛えられて歌手になろうとした人間って、気持ちも基礎も全然違うんだ。ぼくもここまで来るまで大変だったけど、彼だったらきっと乗り越えられる」
ペルーで独学したという日本語が丁寧で綺麗だった。そこに彼の(いい意味での)野心が見えた。
(取材・藤田正)
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