ティト・プエンテのパーカッション・アルバムには、1955年の『プエンテ・イン・パーカッション』(TICO)がある。57年に録音され58年に発表された『トップ・パーカッション』は、その続編とも言えるアルバムだが、どちらも甲乙つけがたい、文字通りヒストリカルなレコーディングと言えるだろう。
RCAの『トップ・パーカッション』は、プエンテを総指揮に、
モンゴ・サンタマリア、ウィリー・ボボ、フリート・コジャーソ、フランシスコ・アグアベージャといった凄腕パーカッショニストをズラリと揃えたセッションで、前半がアフリカ直系の宗教、サンテリスムの音楽を、ティトたちが新しいセンスをちょっと加えながら演奏している。サンテリスムの音楽に初めて接する人には、アクが強く感じられるかもしれないが、次第にその魔術のような複合リズムの魅力のトリコになるはずだ。
フリート・コジャーソやマルセリーノ・ウェラらの渋さバリバリのボーカルも、当然、いい。
アルバムの後半は、プエンテ親分のティンバーレスが大活躍する。ニューヨーク系のリズム・アンサンブルはとはこういうものである、という教科書のような演奏で、その後のサルサやラテン・ジャズなどが、プエンテの技術、センスからどれほど多くを得たかがダイレクトに伝わる曲ばかりだ。
『タンボー』は、1960年に発売された作品。タイトルの「太鼓」という題名が示すように、これもパーカッション・アルバムだが、『トップ・パーカッション』の筋肉むきむきで宗教色強いアプローチと異なり、こちらはホーン・セクションも加わり、ニューヨークのダンス・ホールでの演奏、といった華やかさを加えている。生々しい迫力、という点では『トップ』、アフロ・リズムが都市でどのような衣装をまとうのか、という点ではこの『タンボー』……という選び方ができる。
演奏陣は、のちのサルサ時代のトップ・リーダーの一人となるレイ・バレット、プエンテと長年の相棒だったパタート・バルデスら。例えば「ワワンコー」や「ウィッチ・ドクター・ナイトメア」などに聞ける、彼らのクールなソロの交歓は、キューバ音楽ではなく、やはりニューヨークのラテン・ミュージックなのだ。
(藤田正)
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