パンツやジャーブラが投げ込まれて、もう大変なんです、って大々的な前宣伝がずっと続いたコロンビアの
フアネスだけど、こんな「現象」って過去を振り返れば別に
フアネスだけに限っているわけじゃないし…そういう大メディアのチンケな騒ぎぶりを見て、ゲンナリした音楽ファンも多いことでしょう。
私もその一人なんですが、でも実際の
フアネスは、とても素敵な若きラテン・スターでした。
…で、1曲目がぼくを愛してよ〜と歌う「アマメ」から始まった11月8日@渋谷AXだけど、編成はまったくのロックなのだ。& 長髪じゃなくてボーズ! 7人編成で、
フアネスのギターも「この人はガキの頃からブルース・ロックが好きだったんだろうなー」…が、丸出しなのだった。
では、じゃあオーベー・ロックのエッセンスだけなのか? というとそうではなくて、「入れ物」はそうではあっても中身は自国コロンビアを中心にしたスパニッシュ・ラテンの味がきっちりと反映されている。ここが彼の個性なのだ。
フアネスの声は、少年ぽくて、そして甘くて、女の子にすがりつくような、というキュートなムードで、その部分を取り上げると、時代が時代だったら彼は完璧なボレリスタの道を歩んだんじゃないか、と思わせるほどだった。
その「切ない甘み」が、ロック・バンド仕様の中に染みているわけです。
ラテン・アメリカという点で言うと、彼が作るメロディってそんなにパターンがあるわけじゃない。でも、コロンビアのクンビアは当然のこととして、ジャマイカン・レゲエ、サルサなどなど、リズムの変化がどれほど(スムーズに)歌の景色を変えて行くか、彼は感覚的にきっちりつかんでるね。これは、リズムを勉強すればいいってレベルじゃない。その「南米の北端、カリブの南端」というコロンビアで育ったセンスのいい青年ならでは、って思わせた。だからメロディがぼくらを泣かせるんだ。
「フォトグラフィーア」「ラ・カミーサ・ネグラ」「ケ・パサ」…1時間半ほどのライブだったけど、日本歌謡曲のスタッフが目&耳にしたら、「こりゃおいしいなー」のコピー&アイデア満載の
フアネスだった(…余談だけどジャパン歌謡曲の、途切れることのない情けない「伝統」なんだよね)。
フアネス。コロンビア・サルサの雄、グルーポ・ニーチェのようなローカル色たっぷりのダンス「レベリオーン」で終わってくれたのも嬉しかったし、たくさんの日本の女性が強烈バデーのコロンビアーナにまじって大合唱(スペンイン語だぜ!)していたのには、かなり感動してしまった
マンボラマTokyoなのだった。
(文・藤田正)
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