フアネス in Tokyo:けっこういいコンサートでしたよ
Beats21
 パンツやジャーブラが投げ込まれて、もう大変なんです、って大々的な前宣伝がずっと続いたコロンビアのフアネスだけど、こんな「現象」って過去を振り返れば別にフアネスだけに限っているわけじゃないし…そういう大メディアのチンケな騒ぎぶりを見て、ゲンナリした音楽ファンも多いことでしょう。
 私もその一人なんですが、でも実際のフアネスは、とても素敵な若きラテン・スターでした。
 …で、1曲目がぼくを愛してよ〜と歌う「アマメ」から始まった11月8日@渋谷AXだけど、編成はまったくのロックなのだ。& 長髪じゃなくてボーズ! 7人編成で、フアネスのギターも「この人はガキの頃からブルース・ロックが好きだったんだろうなー」…が、丸出しなのだった。
 では、じゃあオーベー・ロックのエッセンスだけなのか? というとそうではなくて、「入れ物」はそうではあっても中身は自国コロンビアを中心にしたスパニッシュ・ラテンの味がきっちりと反映されている。ここが彼の個性なのだ。
 フアネスの声は、少年ぽくて、そして甘くて、女の子にすがりつくような、というキュートなムードで、その部分を取り上げると、時代が時代だったら彼は完璧なボレリスタの道を歩んだんじゃないか、と思わせるほどだった。
 その「切ない甘み」が、ロック・バンド仕様の中に染みているわけです。
 ラテン・アメリカという点で言うと、彼が作るメロディってそんなにパターンがあるわけじゃない。でも、コロンビアのクンビアは当然のこととして、ジャマイカン・レゲエ、サルサなどなど、リズムの変化がどれほど(スムーズに)歌の景色を変えて行くか、彼は感覚的にきっちりつかんでるね。これは、リズムを勉強すればいいってレベルじゃない。その「南米の北端、カリブの南端」というコロンビアで育ったセンスのいい青年ならでは、って思わせた。だからメロディがぼくらを泣かせるんだ。
「フォトグラフィーア」「ラ・カミーサ・ネグラ」「ケ・パサ」…1時間半ほどのライブだったけど、日本歌謡曲のスタッフが目&耳にしたら、「こりゃおいしいなー」のコピー&アイデア満載のフアネスだった(…余談だけどジャパン歌謡曲の、途切れることのない情けない「伝統」なんだよね)。 
 フアネス。コロンビア・サルサの雄、グルーポ・ニーチェのようなローカル色たっぷりのダンス「レベリオーン」で終わってくれたのも嬉しかったし、たくさんの日本の女性が強烈バデーのコロンビアーナにまじって大合唱(スペンイン語だぜ!)していたのには、かなり感動してしまったマンボラマTokyoなのだった。
(文・藤田正)
 
amazon-『愛と情熱の絆(初回限定盤)(DVD付)』

( 2006/11/10 )

第4回「コザ・てるりん祭」を終えて 文・藤田正
音楽評論家・中村とうよう氏の投身自殺に寄せて:
博多でゴリゴリ、圧倒的なサンタナ・ナイト
「第3回 コザ・てるりん祭」 photo by 森田寛
世界から東博へ、役者が勢ぞろい。「写楽」展がはじまる
藤岡靖洋 著『コルトレーン ジャズの殉教者』を読む
東京セレナーデ Live at 赤坂GRAFFITI
祝・満員御礼:10.25「ディアマンテス結成20周年記念」
Introducing...エリック福崎を紹介する
お報せ:「ディアマンテス結成20周年記念ライブ」は定員に達しました
書評:長部日出雄著『「君が代」肯定論〜世界に誇れる日本美ベストテン』
書評:西原理恵子、月乃光司著『西原理恵子×月乃光司のおサケについてのまじめな話』
誕生釈迦仏がセイ・ハロー:「東大寺大仏 天平の至宝」展、始まる
イサム・ノグチの母を描いた力作『レオニー』、11月に公開
アルコール依存症の実状を正面から描いた『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』
ジャズ界のトップたちを率いて:大西順子『Baroque』Live
映画『瞳の奥の秘密』:現代アルゼンチンでいまも燃える「汚い戦争」の怨念
十代のジョン・レノンを描く:『ノーウェアボーイ』、11月5日から公開
きちじょうじのなつやすみ:河村要助の世界<その2>
上々颱風LIVE「デビュー20周年記念!スペシャル」を観て
フアネス
フアネス(ラテン)
マンボラマTokyo通信:フアネス来日/『エル・カンタンテ』
フアネス in Tokyo:けっこういいコンサートでしたよ
電子書籍:岡本郁生著『もう一つのアメリカン・ミュージック』が完成!
第2回ラテン・グラミー受賞者、ようやく発表される
表紙へ戻る