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マンボラマTokyo」によるサルサ、マンボなどのリイシューが進んでいる。
6月28日に発売されるユニバーサル・ラテン・シリーズの中で、最も珍しい作品がルイ・ラミレス『イン・ザ・ハート・オブ・スパニッシュ・
ハーレム』だ。
1967年に発売されたこの作品、70年代サルサのトップ・ミュージシャンの一人として大活躍したルイの若き日のアルバムで、今日に至るまでまったく評価されずにきたのが不思議なくらいだ。
粘っこいアフロ・リズムのモサンビーケからブーガルーまで、実にフレッシュなアレンジとバンド・アンサンブルで聴かせる。しかもタイトルにあるように、ニューヨークの「スパニッシュ・
ハーレム産」の音楽であることを謳っていて、英語とスペイン語が飛び交う下町の匂いを、特に意識したのが何よりもの「味」なのだ。
……(ライナーノーツから)……CDのシールを破り、そして待つこと一瞬、トラック1の「ルーシーズ・スパニッシュ・
ハーレム」が部屋のスピーカーから飛び出たとたん、あなたはきっとshit、ってつぶやくはずなのだ。スパニッシュ・
ハーレムがどこにあって、この音楽が何と呼ばれているかなんてことは二の次。うへぇ、と感じたほうがリスナーは勝ちだし、思わせてくれたミュージシャンに一生、あなたは忘れ得ない禁断の甘い感情を抱くものなのだ。(この、レコード店の前でポーズを取る街路の風景に溶け込んでいるようなメンバーのジャケット写真をみつめながら)、スパニッシュ・
ハーレムって、こんな感じかと、のっけから乗っかってしまう、同時に乗りたいと思わせてしまうほどのエネルギーを備えているのが、ルイの『イン・ザ・ハート・オブ・スパニッシュ・
ハーレム』なんです。ルイと彼が属したニューヨーク・ラテン・サークルを知る人には釈迦に説法だが、あのマチの、あの辻の、あのビーンズ料理とあのムラータス・イ・ネグラスの界隈に鳴り響くコンガとカンパーナス(鳴り物群)。どこにも「純粋」ってものがなくてその混ざり物ばかりのストリートにあって、でもあの人たちの心はずっとピュアだった。その音が聞こえてくる。ふー、熱いぜ。
(藤田正)
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『イン・ザ・ハート・オブ・スパニッシュ・ハーレム』