「PIKADON PROJECT」は、黒田征太郎、近藤等則、安藤忠雄、荒木経惟の4人が発起人となっている。もちろん「ピカドン」という言葉から、広島・長崎の原爆投下をイメージさせ、反戦を訴えるプロジェクトだ。
その「ピカドン・プロジェクト」による シリーズの第1弾が、『ふたつの
黒い雨』。
内容は、
古謝美佐子と佐原一哉による「
黒い雨」(先行のシングルとは別バージョン)と、都はるみの「こころの街」の2曲。これに黒田が絵本を担当している。
「人間は二足歩行など始めなかたら良かったのに。二本足で歩き始めた瞬間にひょっとして人間は上と下を取り違えたのかもしれません」(都はるみ)
この言葉に象徴されるように、今も世界のいたる所に降りつづける真っ黒な雨、それはすべて人間の仕業ではないのか? 古謝、都という、素晴らしいボーカリストの声は優しそうに聞こえて、内実は怒りに震え相当にドスが効いている。
都の「こころの街」は、トランペッターの近藤が、あえてド演歌風に仕上げて面白い。古謝の「
黒い雨」は、Beats21ですでに触れたとおり、今年の沖縄音楽の重要作となった。
だが、この2曲を聞きながら黒田の絵を見ていると、説得力があるだけに、世界の「憎しみの連鎖」がいつ絶えて無くなるのか、暗然たる気持ちにさせられることも確か。ほんと、どこへ行っても悪いニュースばかりだもんね。
(藤田正)
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