2年半ぶり、モンゴル800の新作『Daniel』  
highwave
 そうか、もう2年半か。古謝美佐子が隠しトラックで歌ってた『百々』以来のアルバムとなるのが『Daniel』だ。通算で4th目だ。
 モンパチらしい、小さなスタジオで作ったんだろうな〜というサウンド・イメージの、狭い空間にギターやドラムがびっちり詰め込まれた「Real Life」から、どんどん快調に飛ばしてゆく。オレら元気でやってます! というメッセージが聞こえてきそうな作品だ。
 メンバーは、上江洌清作(うえず・きよさく)、ギターの儀間崇(ぎま・たかし)、ドラムの睥じ隋覆燭ざと・さとし)の3人だが、儀間の登場の%が高くなっていて、彼は「地球図鑑」「亀」「ストーンハウス」など5曲で詞を書き、ヴォーカルでも活躍している。
 たとえば「地球図鑑」は、じいちゃんに地球の昔話をせがむ歌なんだけど、ということは主人公は別の惑星にいるのか、あるいはまったく姿を変えてしまった地球(の残骸?)で暮らしているのか、という意味深なことになるのだが、歌は、ジャンジャカとギターが鳴り続けるサウンドの中で、サッサと終わってしまう。「オレ、そう思っただけ」といった具合に、あっさり味なのだ。サビのメロディなどは、どこか「くるり」をイメージさせるけれど、言葉はくるりのように暗喩、言葉遊びの傾向が少なくて、彼らと比べてみれば無邪気なんだよね。「あとは、聞いてるみんなで考えて」…。 
 亀を食べちゃいけない、という言い伝え・約束事があるんだと歌う「亀」も、ほんと秘密のタネだけをポロっと差し出してるだけだ。言葉を、いじってみよう、文学的にしてやろうという<悪意><大人ぶり>がない。これってモンパチらしさの一つだとぼくは思う。
 でも、そうは言っても、ぼくのようなカングリ屋は<亀>にしても、<地球>というメタファーにしても、かの『メッセージ(MESSAGE)』のジャケットに写ってた、真っ黒に日焼けした浜辺に立つオジイを即座に思い出す。そして、モンパチの音楽は(君がそう思っとけば)といった具合で、どんどん次のトラックへ移って行ってしまう。
 彼らはどんどんドラムを、ギターを、激しく鳴らすだけだ。例えば、ぼくがちょうど先ほどまで聴いてた、モンパチの大先輩みたいなニール・ヤングの問題作『リヴィング・ウィズ・ウォー』にしても、(大変に上手な作品ではあるけど)、鬱陶しいぐらい言葉に意味の重さを持たせているのだ。モンパチは、どうもそれが嫌いのよう。あっさりと回避しているようにぼくには見えるのだ。
 ぼくがモンパチを、長い島の歌の歴史の中で、画期となるバンドだと捉えているのは、こういう所にもある。<亀>の伝説や、<昔の地球>を歌えるのは、沖縄という<竜宮城>で生きて死ぬことに決めたモンパチだからこそだと思うし、それを自分たちから、アアだコウだと言い放つのは、どうもダサいと考えてるフシがあるね、モンパチって。
 なおこのアルバムにも隠しトラックが付いている。リハーサル・テイクのようなラフな音。アルバム発売直後から始まる「ダニエル・ツアー2006」にひっかけた歌詞、のようにも思えます。
(文・藤田正)

*お報せ:Beats21では、モンゴル800の電子書籍(藤田正著)を近日中に電子書籍として発売します。詳細はこのサイトで発表します。ご期待ください。

amazon-『Daniel/モンゴル800』(2006年8月8日発売)

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