ボブ・ディランの「ブートレッグ・シリーズ」の第6弾だ。
ファンには「ハロウィーン・コンサート」と呼ばれている、1964年10月31日のコンサートの模様を伝える2枚組である。フォーク・ブームの寵児として大きな注目を浴びていた時期の、シンガーとしての異能ぶりが存分に伝わる素晴らしい内容だ。
その後のディランは、翌65年3月に『ブリング・イット・オール・バック・ホーム』を発表し、続いて同年7月、ニューポート・フォーク・フェスに出演、ロックへ転向したと旧来のファンから激しい非難を浴びることになる。バンドを従え、フォーク・ギターからエレキ・ギターに持ち代えることの是非が論議の種になるほど、アコースティック・ギターとハーモニカだけを伴奏にしたディランの歌には、深い説得力があった。
アルバムには「時代は変わる」「イッツ・オールライト・マ」「はげしい雨が降る」「くよくよするなよ」「ミスター・タンブリン・マン」など、初期の代表曲が並んでいるが、今ではあまり語られることのなくなった歌にも、驚くべき才能を感じることができるはずだ。
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