反体制のメッセージをその轟音とラップ&ボーカルで投げつけるレイジが、突然のように発売したアルバム。しかもすべてがカバー曲で、アルバム発売の直前にリード・ボーカルのザックが脱退を発表するという、話題が重なった作品である。
「Microphone Fiend」がエリック・B&ラキーム、「Kick Out The James」が MC5、「Renegades Of Funk」がアフリカ・バンバーター&ザ・ソウル・ソニック・フォース、「Beautiful World」がDevo、「I'm Housin」がEPMDと、ラップ、パンクほかゴチャマゼのようだが、現代社会に大きな疑問を持つレイジが、音楽に何を求めてきたかという点から曲目を眺めると納得がいく。
ロックの古典的名作とも言えるローリング・ストーンズの「Street Fighting Man」や、ボブ・ディランの「Maggie's Farm」などにも、かなりのデフォルメが加えられ、時に原曲の面影すらなくなっている。
しかし、これが素晴らしい。名曲を博物館に置くのではなく、現代の「混沌」という名の路上に放り出した彼らの潔(いさぎよ)さは、ザック以下、きりりと締まった歌と演奏にはっきりと表われている。輸入盤も含め、全14曲入り。