『キューバのうた』(ビクター、写真)は、キューバの伝統歌「トローバ」ほかの味わいを伝えるアルバムである。
プロデューサーにエフライン・リオスを迎え、ボーカリストとしてはミゲリート・クニー・タイプのコクのあるボーカルを聞かせるイグナシオ・カリージョ(1927年〜)、ペドロ・ゴディーネスら大ベテランたちが登場する。
1曲目は「ボレーロの父」といわれるぺぺ・サンチェスの作品「トリステサ(悲哀)」。
トロバドール(吟遊詩人)が活躍した今世紀初頭のムードを、ドゥオ・ボセス・デル・カネイという女性2人組が聞かせる。
珍しいアコーディオンを伴奏にした2曲目「ジョ・ノ・サビーア」は、プロデューサーであるエフライン自らがうたう。エフラインは、男性3人による美しいいギター伴奏曲「ペンサミエント」などでもロマンチックなボーカルを聞かせる。
アルバムは後半から、よりダンサブルな歌へ移行していく。
ヨーロッパ歌曲の色濃いトローバは、1920年代頃には、ソンと呼ばれる黒人的要素をたっぷりと吸収した歌に取って代わられるが、そんな歌のテイストの変化が『キューバのうた』ではゆったりとした聞き心地の中で体験できる。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの世界的な成功によってキューバ音楽への関心が高まっている今、『キューバのうた』で、改めてブエナ・ビスタの音楽的な骨格ともなったトラディショナルなキューバン・ソングを聞いてみるのもいいはずだ。
発売、2001年7月25日。