小気味よい一定のリズムが途切れなく続いていくのが、このアルバムの特徴で、リズムをキープしながらも曲が変わるごとにバンドの編成、楽器、ボーカルが次々と変わっていく。ドラム・セットが西アフリカのジャンベ太鼓に変わり、ギターのリズム・カッティングがアルペジオへと変わればそれはコンゴ〜ハイチ音楽の世界。そして音楽は、いつのまにかブラジルへ。心地よく音楽の旅をさせるべガの構成力は見事だ。
この聞きやすさは、楽器やボーカルの生なインタープレイを重視したからこそだろう。クラブ・シーンの旗手と言われるべガのこの姿勢は注目に値する。
彼がただのDJではないことは、アルバムの白眉ともいえるサルサ〜アフロ・キューバンのメドレーにはっきりと記されている。彼の叔父にあたるサルサ最高の(そして最も悲しい死に方をした)シンガー、故エクトル・ラボーに捧げられた「キンボンボ」を中心とした数曲は、ニューヨークのプエルトリコ人ならではの味わいだ。
エディ・パルミェーリ〜
ウィリー・コローン・スタイルのトロンバンガ編成(もろに70年代の息吹)の熱演からは、彼が「ニューヨーク=スパニッシュ・カリビアン」生え抜きの「ミュージシャン」であることがわかる。
日本でも大ヒットしたアルバム『ニューヨリカン・ソウル』を凌ぐ、見事に気持ちのいい作品である。
(写真は、彼が経営するMAWレコードのロゴ)