ジョン・レノンの生誕六十周年、没後二十周年を記念して、改めて彼の作品が発売され直されている。
『ジョンの魂』は、1970年に録音されたジョンの初めてのソロ・アルバム。今回は、未亡人である
オノ・ヨーコの立会いのもと、ミックスとマスタリングがしなおされている。言ってみれば、かつてをよく知る人物の監視のもとに、今一度、昔どおりに仕立て直したという感じだろうか。それぞれの音のツブ立ちは、(好き嫌いは除外して)LPよりもいい。
しかし、私家盤のようなフランクな作りだからこそ、目の前に
ジョン・レノンがいるような手触り、身悶えするような感動は、今度の『じょんたま』でも同じである。
当時の彼は、過去の心の傷を癒すために「プライマル・スクリーム」(大声で泣き叫ぶ治療)を受けていたことが知られているが、その影響がはっきりとうかがえるのが1曲目の「マザー」。始原から届けられたような粟立つ叫びが、少しづつ遠くへ去っていく時の凍りつくような瞬間。そして「リメンバー」の爆音。爆音に続く美しい「ラブ」。
天才ではなく、人としての
ジョン・レノンの心に触れるための、最初の1枚。
収録曲:マザー、ホールド・オン、アイ・ファウンド・アウト、ワーキング・クラス・ヒーロー、アイソレイション、リメンバー ほか。