近づく戦争の足音/またも「イマジン」、放送禁止歌に
東芝EMI
 同時多発テロをきっかけにして、アメリカでは開戦への準備が着々と進められている。
 これに呼応するかのように、世界貿易センタービルの惨劇を思い出させる歌や、戦争批判歌などはラジオ番組で自主規制され、反対に「ゴッド・ブレス・アメリカ」などの愛国歌が飛躍的にエアプレイ回数を伸ばすなど、「準戦時下」的な様相を呈してきた。
 ジョン・レノンの歴史的名作「イマジン」も、湾岸戦争時と同じく、まっさきに「自粛」の対象となったようだ。(写真は、アルバム『イマジン)』)
 約150曲の規制リストを作成し配布したのは、全米の1170に及ぶラジオ局を所有する「クリア・チャンネル・コミュニケイションズ」。 
 全米一の規模を誇るネットワークのこのリストには、自爆テロを思い出させる歌として、
 Peter, Paul & Mary: Leaving On A Jetplane
 The Gap Band: You Dropped A Bomb On Me
 Soundgarden: Blow Up The Outside World
Sony Music
 The Beatles: Ticket To Ride
The Drifters:On Broadway
 Elton John: Bennie And The Jets .....
などが挙がっていた。これらは「飛行機」や「爆弾」「旅」など題名だけのイメージで選ばれたものばかり。
 このほか、AC/DCの「TNT」、The Bangles「Walk Like A Egiptian」、Led Zeppelinの「Stairway To Heaven」という、意識しすぎではないかという歌も多い。
 ニール・ヤングの愛国的な「America」も、リストに。
 楽天的な世界平和ソングとして知られるLouis Armstrongの「What A Wonderful World」、そしてもちろん、反戦・無政府主義の思想に立ったJohn Lennonの「Imagine」や、Cat Stevens(現Yusuf Islam)の「Peace Train」、Peter & Gordonの「A World Without Love」も。
 またSimon and Garfunkelの「Bridge Over Troubled Water(明日に架ける橋)」は、この時期にはあまりに哀しすぎるという「配慮」なのかもしれない。

 (写真は、サイモン&ガーファンクルのアルバム『明日に架ける橋』)
 クリア・チャネル社は、2001年9月18日付で声明を発表し、内部資料として配布されたリストが一部で批判を呼んだことに対し、同社は配下の各ラジオ局へ特定の曲の「放送禁止」(緊急声明文から)など命じたことは決してないと反論している。
 曲の選定は、各番組・各局の責任者が決めることとし、同社は憲法修正第1条(表現の自由)、発言の自由を「強烈に信じている」(同上)と発表している。

 いっぽう、同時多発テロ以降のアメリカで、際立って歌われることが多くなっているのは、1918年、アービング・バーリンIrving Berlinによって作られたブロードウェイ・ソング「God Bless America」である。「ゴッド・ブレス・アメリカ」は、38年、ナチス・ドイツがオーストリアを併合した年に、CBSラジオ用にケイト・スミスがうたい、国威高揚歌として広まった歌だった。
 この歌は現在、ナショナル・カテドラルおける政府主催の大慰霊祭を筆頭にして、テロに倒れた人々を追悼する様々な場で、国歌「The Star-Spangled Banner」以上にアメリカ人がうたっている、と言われている。
 もちろん国歌も、ホイットニー・ヒューストンが湾岸戦争時に歌い(アメリカ人には)記憶に新しいバージョンが再度注目を浴び、すでにCD化の話が持ちあがっている。
 湾岸戦争時にヒットした、Lee Greenwoodの「God Bless The U.S.A.」は、テロ発生後1週間で、もっともエアプレイが増えた歌となった(Broadcast Data Systems調べ)。その数、1100局の調査で、テロ以前の54回から4267回と約80倍の増加である。

 歌の流れを見るだけでも、アメリカは戦争に向かって突っ走っているようである。
(おわり)
関連サイト:
Clear Channel Communications, Inc.
http://www.clearchannel.com/

( 2001/09/20 )

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