サンゴとサンゴ礁のはなし―南の海のふしぎな生態系
『ゾウの時間 ネズミの時間』(中公新書)などの著書で知られる本川達雄(動物生理学)のサンゴ・ブックが発売された。
 題して『サンゴとサンゴ礁のはなし―南の海のふしぎな生態系』。
 あとがきに「サンゴ礁はやわかり」とあるように一般読者に向けて書かれた新書で、なかなかに示唆に富んだ内容だ。かつて本川は『サンゴ礁の生物たち』(1985年)を書いているが、本書はこれを全面的に書き換えたもの。「SAVE THE CORAL 2008」の作業の合間に読んだこともあり、いろいろと考えさせられることの多い書籍だった。
『サンゴとサンゴ礁のはなし』は、サンゴとは何か、どんな動物であるか、どんな生活をしているか、といった基本的な知識にはじまり、サンゴ礁の成り立ちや、サンゴ礁に集まる生物のもろもろ、サンゴ礁の危機と保全についてまで、多角的に解説している。ただ本書の約半分を締める前半部をQ&Aで構成していることからも、海の下のサンゴ〜サンゴ礁が一般の我々にはまだまだ関心が高くなく、けっこう説明がややこしいことを物語っている。
 たしかにサンゴそのものの種類・構造や、サンゴ(造礁サンゴ)が成長するための最大のポイントである褐虫藻(かっちゅうそう)の説明など、本川先生はずいぶん丁寧に書いているが、それでもなお面倒くさいな〜と思う人もいるだろう。だがその複雑こそが生き物の不思議であって、ちょいとガマンして読み進んでいくと、いくつかの興味深い指摘に出会うのだ。
 たとえはサンゴは「われわれのように食べものを求めてさまようために必要な足や、さがすための眼や、情報処理のための脳もありません。こういう器官は活発に動くからこそ必要になるものです」(48ページ)
「動かなくても、食べなくても、息をしなくても」(49ページ)、サンゴは生きていけて、そのサンゴによって海の無数の生物が生かされている、あるいは我々が生きるための決定的な土台の一つとなっている……これって世の中をどう見るかの哲学を、サンゴが教えているってことだ。
 あるいは、サンゴの群体はある意味「不死身」だという指摘も、すごい(64ページ)。
 古代からヒトがめんめんと追い求めた「不老不死」のありかとは、あるいは「神仙思想」…そして…。
 これ以上は言わないけど、そのコタエは海の底にあった。
 そして今、そのサンゴ礁が危機に直面している。
(文・藤田正)
*本書の解説は、以下のHP「サンゴ礁年漂流記」に詳しい。

amazon-『サンゴとサンゴ礁のはなし―南の海のふしぎな生態系』(中公新書1953)

サンゴ礁年漂流記(「放蕩息子の半可通信」内「放蕩見聞録」別館)
http://sangoshonen.houtoumusko.pepper.jp/

( 2008/08/22 )

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