ボブ・マーリーとザ・ウェイラーズが世界的になるのは、もちろん、アイランド・
レコードからの『キャッチ・ア・ファイア』がリリースされた時からである(七二年十二月)。
3枚組『
ボブ・マーリーJADボックス』は、その直前の彼らの姿を紹介するもので、自分たちで始めたタフ・ゴング・レコードの初期や、リー・ペリーのプロデュース作品、ヨーロッパ録音など、興味深い録音がずらりと並んでいる。
このコンピレイションを企画したのは、JADのダニー・シムズだが、彼はマーリーの才能を世界的にしようと画策した最初の人として知られる。その後、両者は仲たがいしザ・ウェイラーズはアイランドと改めてワールドワイドの契約を果たすことになる。今回のボックスは、そんなシムズが保有する録音をまとめたもののようで、シングルのB面(いわゆる「バージョン」)も多数収録されていて、これを聴いているだけでも楽しく、スリリングだ。
また、「コンクリート・ジャングル」や「ライブリー・アップ・ユアセルフ」など代表作のオリジナルはこういう感じだったのか! と驚かされるボックスでもある。
アイランドの諸作品は、非常に洗練された音作りだが、ここに聴ける「ジャマイカン・スター時代の
ボブ・マーリー」は、いかにも地元の、という手わざリだ。ジェイムズ・ブラウンをモロにコピーした「ブラック・プログレス」や、もろにソウル・グループのテイストの「ホールド・オン・トゥ・ジス・フィーリング」(ボブ&リタ&レスター・スターリングス・オール・スター名義)なども、思わず耳をそばだててしまう。
「ミュージック・ゴナ・ティーチ」(別名「ミュージック・レッスン」)という、今回始めて発見された幻の録音もある。
スウェーデンのホテルの一室で録音されたボブの弾き語りも、裸のレゲエ・レジェンドを今に伝えるという点で貴重だ。
発売は4月23日。レゲエ・ファン、必聴のアルバムだ。
(藤田正)
Amazon.co.jp-ボブ・マーリーJADボックス(輸入盤)
≪Beats21 Online Book≫ 電子書籍 【立ち読みできます】
『ボブ・マーリーの一生:その36年の軌跡を追う』藤田正著