アイヌの音楽っていうのは、こういうような古い縄文のスタイルを残した音楽です。短いフレーズの繰り返しをどんどん変化させていく。一つの完結した歌というよりも、始まりも終わりもない。それが縄文の音楽の形だろうと想像するんです。そこにルーツがあるんだろうと思います。
----3分の中に起承転結の要素がきちんと詰め込まれたような音楽とは正反対のもの。
トンコリというのは、調弦にしても5万種類ぐらいあります。要するに「ドレミファ」じゃないから、毎回、その時のピッチも変わるし、同じ曲でも弾く人が違うと全然リズムが違ってくる。同じ人でも、昔と今とでは違ったりする。
トンコリの弦というのは、昔はシカのアキレス腱なんかを使っていました。それを石で叩くと絡んだ繊維状になるんですが、それを撚(よ)ってつなげて1本にしたんですね。
この弦を張ったトンコリなんて倍音だらけで、チューニング・メーターでは計れない。
----どの音が基調になっているかが、まるでわからない。
ということは、どの音でも合うということです。だから「調弦は適当でいいんです」なんて俺が言うと、インタビュワーは「こいつ、インチキ臭い奴だな」なんて顔してますよ。でも、これホントですから。
トンコリの基本としてあるのは、リズムの組み合わせなんですよ。トンコリの上手い人というのは、テーマになる演奏方法があって、それに対して「イカイ」を入れるという言い方をします。主のリズムに対しての変奏です。少しづつリズムを変えていくのが上手な人。ということは多彩なリズムの引き出しを持っている人が上手い人ということ。
レゲエのベース奏者と同じですよ。
----トンコリはリズムなんですね。
リズムです。