自主制作盤を除いて、全国発売CDとしては2枚目となる
モンゴル800のアルバムが発売された(2001年9月16日)。
 全国のインディーズ・チャートを席捲した前作『Go On As You Are』から約2年ぶりとなる『メッセージ』(ハイウェーブ/写真)は、沖縄のロック・バンドとして自分たちの立場を明確にした画期的な内容となっている。
 アルバムの中に彼らは、次のようなメッセージを記している(前半、題名なし)。
 
「この島に 生を受けて 時流れはやし 早二十年
 変わりゆく 時と共に 大切な物まで失うものか
 あぁ 生きていて良かったと 永遠の淵 言えますように
 どんな小さな花でさえ風に吹かれ 人に踏まれ輝いてる
 産声あげ母の胸にねむる赤ちゃん
 それぞれの思い抱いて 歩き出す若者よ
 肌の色 言語の壁超え 愛育む二人
 現実の日々に流れ あきらめないで 国の民よ
 さぁ みんなで 歌いましょう」
 アルバム『メッセージ』は、すべての詞をボーカルの上江洌清作(うえず・きよさく)が書いている。プロデュースはメンバー3人。
 そのノイジーな、ブルー・ハーツをルーツに持つ彼らのギター・サウンドは、沖縄に限らず、最近の若手ロック・バンドの一典型だが、
モンゴル800には歌うべきはっきりとしたテーマがあるのが、その他大勢の日本のロック・ミュージシャンと異なるところだ。
 たとえば、白黒の昔なつかしい沖縄の風景をとらえたジャケットをCDパッケージから取り出せば、裏側には銃剣を
ウチナーンチュに突きつける米兵が飛び出す。
 沖縄という社会に生まれた若者だからこそ、世界に訴えなくてはならない、伝えたいという彼の積極性が、待ち望まれたこの新作に光を与える。
 日本語詞、英語詞を使い分けた全14曲には、「いったいどれだけの子供達の命が戦争犠牲になった」のかと歌う「Song For You」(英詞)があり、「親が子の道つくりすぎて 夢持つ事忘れた子」と歌う「夢叶う」がある。
 このアルバムの中心をなす1曲である「琉球愛歌」では、
「泣かないで人々よ あなたのため明日のため
 すべての国よ うわべだけの付き合いやめて
 忘れるな琉球の心 武器使わず 自然を愛する
 自分を捨てて誰かのために何かができる」(1番)
 と、
米・同時多発テロ以後の世界的な狂気を見据えたような、沖縄からの明確なメッセージがテーマとなっている。
 アルバム『メッセージ』は、発売1カ月後、2001年10月15日の段階で出荷枚数20万枚を数える大ヒット・アルバムである(レーベルからの公式発表)。
 沖縄音楽の趨勢も、「
ウチナー・ポップ」という言葉が登場した10年前から、大きく流れが変わった。
モンゴル800は沖縄音楽の新時代を代表するバンドだが、しかし、沖縄ならではの視線・主張は不変だ。 
 アルバム『メッセージ』は、彼らにとっても、今後の沖縄〜日本のロック・ミュージックにとっても大切なアルバムとなるはずである。