2001年5月、東京の国立小劇場で行なわれた人形浄瑠璃・文楽公演は、普段にも増して熱気にあふれていた。演目は「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」が第1部、第2部が「玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)」と「曾根崎心中」である。
特に「曽根崎」は、
吉田玉男(写真左)と
吉田簑助(右)という二人の人間国宝が3年ぶりにこの人気演目で共演するとあって、珍しいカーテン・コールまで行なわれた日(5月12日)もあった。
「曽根崎」は、近松門左衛門が18世紀に作った世話物の傑作。遊女「お初」と恋人の醤油屋の手代「徳兵衛」が、徳兵衛によるカネの貸し借りをきっかけとして、身の潔白を世間へ知らすために二人で心中するという物語である。もちろん、玉男は若い雛男(ひなおのこ)徳兵衛を、簑助はお初である。
(写真は「曽根崎心中」天満屋の段)。