充実の12枚目・新アジア音楽『りんけんバンド/織りなす日々』
Rinken2024
 現代沖縄のトップ・バンドとして活躍する「りんけんバンド」の、通算12枚目となるオリジナル・アルバム『織りなす日々』(りんけんレコード)が、2001月11月21日に発売される。
 このアルバムは2000年に、ダブル・アルバムとして発売が予定されていたものだが、結果的としてCD1枚・12曲入り(初回プレスは13曲入り)となった。
 その間、リーダーの照屋林賢はミュージシャンだけでなく、沖縄の文化・経済全般においてもますます多忙な毎日を過ごすような立場となり、またバンドからは右腕的な存在だったドラマーの上地一成と、ボーカルの大川豊治がバンドから抜けた。
 ニュー・アルバム『織りなる日々』は、そういう意味で、バンドがこれからどのように進むのかが注目されていた作品だった。
『織りなす日々』は、名嘉睦稔(作詞)と作曲の照屋林賢のコンビが、これまで以上に密接な関係を見せたアルバムである。上原知子のボーカルによる1曲目のタイトル・ソングをはじめとして、「1,2,3,4」(作詞・桑江良美)、「ちゃーがなエイサー」(作詞・林賢)を除き、すべてが同コンビの作品である。
Rinken2024から
 これまでの睦稔&林賢の作品は、一つに、レベルの高いウチナー口を使うことが特徴だった。しかしこのアルバムでは、ずっと平易に、しかも沖縄の語調の特質はしっかりと匂い立たせるという、作家二人の洗練が見て取れるのである。
 例えば「夏ぬ風(なちぬかじ)」のリフレインは、
 
 わんや夏ぬ風 草木んなびち
 波がする事(ぐとぅ)に 
 ゆさな ゆさな ゆさな 
 (我は夏の風、波がする如く、ゆさな、ゆさな、ゆさな)
 
 であるが、林賢が作り出すゆったりとした海のリズムに乗せて、上原知子はいつものあの堂々たる美声で、睦稔の「沖縄語」の特色を引き立たせている。
 詩形が琉歌の変形であることもまた面白く、こういう所から、彼らが伝統様式の応用と逸脱を同時に狙うことで、沖縄音楽のルネッサンスを目指していることが知れるのである。
 アルバム『織りなす日々』は、りんけんバンド+睦稔が、何年もかけて試みてきた「沖縄からアジアへ」というスタンスを、はっきりと見せた作品と言えるだろう。
 例に引いた「夏の風」だけでなく、『織りなす日々』に聞くりんけんバンドは、これが沖縄音楽だとハナから思い込まないで接すると、ちょっとした驚きを味わう音楽に仕上がっている。
 たしかに林賢の三線が鳴り、エイサーのリズムも飛び出すアルバムである。しかし沖縄のどこにも『織りなす日々』のような音楽はなく、むしろ沖縄と、沖縄と海で接してきた諸文化との融合を目指してきた彼らの独自の方向性が、いよいよ実を結びつつあることが、その心地よいサウンドの中で実感できるのである。
 アジアの歌声・新しいアジア音楽としての「りんけんバンド」。
『織りなす日々』は、その画期となる作品である。
 
Amazon.co.jp−りんけんバンド『織りなす日々』
 
 

( 2001/11/19 )

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