劇団1980(いちきゅうはちまる)は、1990年からこの血なまぐさく、エロチックで、怪奇な物語を舞台に上げてきた。「謎解き」とあるように、河内音頭の中で描かれる人間関係を、当時の新聞などと照らし合わせ、本当の事件とはいかなるものであったかをコミカルに検証する。今回は池袋・東京芸術劇場での公演で、2001年2月4日の最終日は、広々としたホールにもかかわらず、たくさんの観客が集まっていた。
「謎解き 河内十人斬り」の設定は、セミプロとおぼしき河内音頭仲間が、この演目を一度バラバラにし、新しい解釈で「十人斬り」を歌いなおそうとする、というものである。そうすれば自分たちも人気が出て、きっと儲かる……寿司屋の音頭丸(加瀬慎一)、農協の市太(佐藤リョースケ)、信用金庫の次郎作(さとうしゅうへい)たちは、こう考える。
農協の市太が「熊太郎」、信用金庫の次郎作が「弥五郎」と、時に応じて劇中劇となり、不義密通の現場、借金を踏み倒され殴られた熊太郎の怒りが沸騰する場面など、そこかしこに音頭が登場する。バックの演奏には三味線が14人もいて、ジャズ・ドラマーの
古澤良治郎と元・
上々颱風の猪野陽子(キーボード)も上手(かみて)に待機、そして歌舞伎などの手法や呼吸も取り入れるなど、和風ミュージカルとして面白いアプローチが見られた。
ボーカル(音頭)のスタイルは、もろに鉄砲節(
鉄砲光三郎)。
音頭、三味線、太鼓ともどもマネの域を出てはいないのだが、舞台芸としてずいぶん頑張っていることは、手に取るようにわかった。