1992年のデビュー以来、R&Bの世界で確固たる地位を築いてきた
R・ケリーR.Kellyが、2000年にリリースした5枚目の作品。彼には『12 Play』(93年)という有名なセックス・アルバムがあるが、『TP-2.Com』はその続編ともいうべきもの。「TP-2」とは「2000年版12 Play」という意味で、作・アレンジ・制作と、彼がアルバムのすべてを管理した作品である。
オープニングのタイトル・ソングから、すでにセックス一直線なのだ。後ろからキツくヒットして、前では回して、という露骨な歌声が聞こえてくる。2曲目は「Strip For You」。休むことなく、ケリー君は、どんどん深みに入ってゆく。
しかし、確かにエッチな言葉やシチュエンションの連続なのだが、彼のまったく迷いのない、しなやかでストロングな歌声は、こういう秘め事を見事に歌い上げられるのは世界にオレしかいないという絶大な自信にあふれている。言葉に赤面しながらも、彼のボーカルに引き込まれていくのである。
注目すべきは、彼の視点がストリートに根ざしていることで、これらのトロトロに甘い歌たちは、けっこうアブナい「オレたちの世界」からの出身であることを主張している。こういう姿勢は『12 Play』の頃よりも強く、本アルバムの後半に置かれた、若くしてストリートで死んだ黒人に捧げる名歌「I Wish - Remix(To The Homies That We Lost)」に至るまで、見事に一貫している。