アップリンクが公開を予定している『
ジプシー・キャラバン』が面白い。
かつて、ロマ(
ジプシー)の人々がインドから長い旅に出たことは少しずつ知られてきた。ロマを象徴する文化といえば、音楽やダンス。その広域に散らばった仲間たちを一堂に集めツアーする模様をとらえたのがこの映画だ(監督、ジャスミン・デラル)。
登場するのは、日本でもファンの多いルーマニアのタラフ・ドゥ・ハイドゥークス、同じくファンファーラ・チョクルリーア、スペインのアントニオ・エル・ピパ(フラメンコ・ダンサー)と彼のアンサンブル、マケドニアのエスマ(ジプシーの女王と呼ばれる歌手)、そして「故郷」であるインドの砂漠からはマハラジャという歌とダンスのチームである。 カナダをふくむ北米各都市をまわる長いツアーの中で、それぞれが徐々に親交を深めてゆく姿も面白く、その合間あいまに、彼らの地元での生活がはさみこまれる。それぞれが長い弾圧と差別の中で自分たちの「生」をたくましくしてきたことがよくわかる構成だ。
世界は
ジプシーに学ぶべきだというエスマの意見が胸に迫る。私たちは、迫害も差別も戦争も起こさなかった民族(ずっと虐げられてきただけなのだ)、と彼女は言うのである。
タラフの人気バイオリニスト、ニコラエ老の遺体をたくさんの親族・仲間が見守る夜伽(よとぎ)のシーンが映画の「フィナーレ」となって、涙をさそう。
残念といえば、各グループの歌とダンスを丸1曲、楽しむことができないことだ。監督はあくまで人間のドキュメントと考えているようだから、本作を「音楽映画」だと思って観ると…期待はずれ、となるだろうな。
2007年12月か翌1月の公開予定。
(文・藤田正)
『ジプシー・キャラバン』
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『バンド・オブ・ジプシーズ/タラフ・ドゥ・ハイドゥークス』
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『Baro Biao: World Wide Wedding/Fanfare Ciocarlia』
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『エスマの自叙伝/エスマ』